永遠の魅力ーグルメ天国 中国の郷土料理
材料に肉や魚を使わず、油も植物性の油しか使わない精進料理は、いわゆるベジタリアンのための食事のように思われるが、中国では宗教上の理由からのみならず、肉抜きは消化器や循環器などの調子を整えるのに効果があるとして、何千年もの昔から存在していたのである。
宗教との絡みはさておき、もし、その頃すでに健康上の理由から精進料理を考えたとしたら、これは大変なことである。経験的にそのようなことを知ったのだろうか。 最近では美肌を保つためにも効き目があるというので、若い女性の間でもファンが多い。日本の普茶料理も、そのルーツは中国で生まれた精進料理にあるという。
動物性の材料を排除して、野菜や各種の穀物、きのこ類、豆腐、それに、油はピーナッツ、胡麻、大豆などの油しか使わない精進料理を今日まで伝えてきたのは、やはり食欲をそそるための工夫があったからだと思われる。一つには健康維持のためということもあったかもしれないが、「料理」である以上、食べたいという気を起こさせるものでなければならない。精進料理を支えてきたのは、やはり中国人の卓越した調理技術ではなかったと思うのである。
その深みある味わいは言うに及ばず、チャーシューやローストダック、貝柱などとそっくりに似せた豆腐料理まである。見た目だけでなく、味や舌触りまで本物とそっくりときては、これはもうイミテーションの世界を飛び越えた、長い年月の間に磨き抜かれた精緻な調理技術の極致以外の何ものでもなかろう。
『精進』とは、もともと仏教から出た言葉で、動物の殺生に繋がる食事をとらないという教えに沿った、粗食のことをいっったのであるという説があるが、もう一説によると、これは、仏教などの宗教とは関係なく、宋の時代に、しばしば貧困のため、肉や魚を使わない菜食主体の食事がやはり、これを『素食』といっていたという。特に、当時の文人たちの間で広まったとのことだが、我々が言う『素食に耐える』という表現も、ここから始まったかとも思う。
精進料理のルーツとしては、いずれが正しいのか分からないが、香港では精進料理のレストランはみな「素食館」とか「何々素食」とかいう看板を掲げていて、いわゆるベジタリアンがお得意さんである。