永遠の魅力ーグルメ天国 中国の郷土料理
中国の郷土料理を楽しむ
上海の近くに杭州という、南宋時代に中国の都だったところがある。
そこの西湖で捕れる淡水魚の松の実揚げや、じゅん菜、それに小海老炒めなどが有名だが、一般的に料理のレベルは高い。現在では北京料理の1つになっていて特に杭州料理の中に入れるのは適当ではないかも知れないが、有名なベガーズ・チキン(富貴鶏)はもともと杭州で生まれたという。
キャベツの漬け物、椎茸、玉葱などを各種の香辛料と共に鶏の腹に詰め、蓮の葉でしっかりくるみ、それを更に粘土で固めてから弱火でゆっくり焼き上げたのが、ベガース・チキンである。粘土に包まれ時間をかけて充分蒸されるので肉は軟らかく、蓮の香りが食欲をそそる。
「富貴鶏」という立派な料理の名前はその素晴らしい味からきていると思われるが、ベガーズ(乞食の)・チキンの由来は、ちょっと変わっている。
その昔、乞食が鶏を盗んだが、処置に困り、泥をまぶして穴の中に埋め、ばれないようにその上で焚き火をしたところ(一説によれば太陽の熱で)、泥で固められた鶏に程良く熱が通り、肉も適当に蒸されて、思いもかけず素晴らしい料理が出来上がったという。いわば偶然の産物であるが、これがベガーズ・チキンの由来である。
これを食べる時には、一応の儀式(?)を経なければならない。
ベガーズ・チキンは粘土に包まれたままで運ばれてくるが、先ずその席の主賓、または最年長者が木槌でその粘土を割ることになっている。粘土が割られて始めて、ウエイターにより料理が取り出されるのである。
もっとも、これは儀式だから、粘土割りに選ばれた人も軽く1、2回木槌を下ろせばよいので、粘土の取り除きはウエイターの仕事である。