池田 宏
ほんの30年前まで、越冬隊が断片的にもたらす情報でしか知る由もなかった「南極大陸」が、最近ではごく一般的な観光地として急速に賑わい始めている。 毎年のように南極に出かけていって通算13回の南極観光を体験した私にとっても、ファインダーから覗く南極大陸は、何度訪れても手つかずの大自然がもたらす強烈な印象と、新たな発見に満ち溢れている。
急増する観光客に最近では、残された大陸の環境破壊を心配する声も結構聞かれるようになったが、しかし、大半は一部をもって全体を推しはかる一面的な「観光公害論」が、針小棒大に伝聞されている結果にもよる。スケールの大きな大自然に息を呑む時、観光客はむしろ環境破壊への懺悔の気持ちを持って帰ってくる。それがエコーツリズムの神髄でもあると私は信じている。
機会があったら是非「南極」の迫力満点の大自然を体験して欲しい。そのことが、人類の共有財産である地球の汚染を止める心のエネルギーになるはずだからだ。 昨年海外旅行に出かけて行った日本人は1530万人にのぼるが、もちろん、その中で南極旅行を体験した人はほんの一握りに過ぎない。南極の観光とは何か? 南極クルーズの実情はどのようになっているのかなど、ファインダーから覗いた南極の姿を紹介しながら、南極に関する認識を深める情報交換として「南極観光フォーラム」を主宰して行きたい。
体験、未体験者を問わず南極に関する感想やご意見をお寄せいただきたい。
編集人敬白
池田 宏
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