その土地に暮らす人々の生活が肌で感じられる市場は、今やツーリストにとっても外せない人気の観光スポット。ラトビアの首都リガには、一度は訪れてみたい東ヨーロッパ最大、かつ世界遺産に含まれた「中央市場」がある。
東ヨーロッパ最大! 飛行船の格納庫を再利用した世界遺産の「中央市場」
中央駅近く、ダウガヴァ川の畔にある「リガ中央市場」は、市民の胃袋をささえるリガの台所だ。ここは毎日10万近くの人々が訪れる世界的にも珍しい世界遺産の中央市場。5つの大きなパビリオンで構成され、高台から見るとその規模が良くわかる。
さて、この市場はなぜ世界遺産なのだろうか?
ロマネスクやゴシックからバロックまで、様々な建築様式が混在するリガの歴史地区は、その歴史・学術的な価値の高さが評価され、1997年にユネスコ世界文化遺産として登録された。
この市場があるのは、かつてドイツの飛行船「ツェッペリン」の格納庫として使われていた建物で、6年の歳月を費やして改装し、1930年に中央市場としてオープンした。そうした希少性から「リガ歴史地区」に含まれる形で世界遺産に登録されている。
市場の総面積は72,300平方メートル。東ヨーロッパ最大と言われ、そこに3,000あまりの店舗が営業している。扱っている商品は、肉や魚、野菜や果物といった生鮮食品からハムやソーセージなどの加工食品、パンやチーズ、ハチミツまで実に様々で、その他にも工業製品や衣類、手編みのニット製品や工芸品なども揃っていることから、お土産探しをする観光客にも人気のショッピングスポットでもある。
広い場内を歩きながら気づいた、日本との大きな違いは「活気」。日本の市場では、客を呼び込む、売り子の威勢の良い声が当たりまえのように響き渡っているが、リガ中央市場はお客がたくさんいても静かなのだ。
それも国民性。加えてほんの30年前まで、商売で競い合うことのなかった社会主義体制の国だったと考えれば、それも当然といえば当然なのだが、店先で見慣れた鮮魚やイクラを見ながら、その静けさに少し拍子抜けしたのは筆者だけであろうか?
とはいえ、その土地に暮らす人々の食文化や日常が垣間見られる市場は、やはり興味深いものがある。
2019年春に誕生したガストロ・マーケット「CENTRĀLAIS」
開業からまもなく90年を迎えるリガの中央市場。近年、ヨーロッパで拡大する美食ブームを受けてか、歴史ある中央市場もその姿を変えつつある。そんな中、新設されたのが「CENTRĀLAIS」だ。
「CENTRĀLAIS」は、この春、場内に誕生したガストロ・マーケット。日本に比べると〈大人のフードコート〉といった印象で、この一角にバーガーやパスタなどの軽食から「提灯」が躍る寿司や天ぷらまで、様々なジャンルの店が軒を連ね、ローカルの若者を中心に人気のグルメスポットとなっている。
その魅力は、何と言ってもカジュアルな雰囲気とコスパの良さ。午前11時にオープンし平日は22時まで、週末は25時まで営業しているので、街中のレストランで夕食を終え、ホテルに戻る前に雰囲気を変えて食後酒を楽しみたい時など、様々なシチュエーションで活用できる。
店舗や内容により異なるが、料金の目安は1品10ユーロ前後。地元のビールは1杯4ユーロほどで味わえる。下の写真の肉料理(ステーキ)は、サイドメニューを添えて8.50ユーロ。全店クレジットカードOKで、ビール1杯でも気兼ねなく使える。クレジットカードの控えは、リクエストベースでもらえる。
利用方法はセルフサービスが基本。料理は、会計をすると店名入りの電子番号札が手渡され、それが鳴ったらピックアップに行くシステムで、ビールやスピリッツなどのドリンク類は、その場で受け取る。テーブルは空いている場所を無料で自由に使える。
街中を歩いていても感じることだが、ラトビアの人は非常に秩序的で、夜でも東京より安全なイメージ。このガストロ・マーケットには数名だが私服警備が入っていて、実によく見てくれている。もちろん、どんな場所でも油断は禁物だが、衛生面においても安心して利用できるのは嬉しい。清掃が行き届いた入口右のトイレも、無料で利用できる。
次回は「ヨーロッパ最大級の野外博物館でラトビアの民族文化に出会う」
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