ドイツ観光局、2018年度グルマン世界料理本大賞『ドイツパン大全』の著者 森本智子さんに観光功労賞を授与
森本智子さん著『ドイツパン大全』が、2018年度グルマン世界料理本大賞のパン部門でグランプリを獲得した。これを受けドイツ観光局は10日、同書の著者である森本智子さんが長年にわたりドイツのフードツーリズムの振興で果たしてきた功績を称え、ドイツ観光功労賞を授与した。
森本さんはドイツ在住歴11年。ドイツ食品普及協会の代表でもある。帰国後、ドイツ食品の輸入、販売サポート、展示会、イベントのコーディネート、ドイツ視察旅行の企画・ガイド、ドイツ食品・食文化セミナーなど、幅広い分野で活躍するドイツの食のプロフェッショナルである。
世界で最も種類が多い「ドイツパン」
大小合わせ、その種類は2000とも3000とも言われるドイツのパン。あまり知られていないが、実はドイツは世界で最もパンの種類が多いパン大国である。
森本さんによると、その背景には南は小麦、北はライ麦が生産されるなどの「気候的な理由」、地方分散型の「歴史・政治的背景」、朝晩にパンという「食事のスタイル」の3つが大きく影響しており、朝食によく食べられる小型パンだけでも1200種類、主に夕飯で食される大型パンも300種類、実際にはもっと多いとも言われている。また、グルテンを気にする人が多い昨今、ドイツのグルテンフリーのパンの多さも特徴の一つに挙げられる。
この程、誠文堂新光社から発行された著書『ドイツパン大全』にはそんな中から定番ドイツパン100種以上が、材料や作り方、歴史や文化的な背景、さらには食べ方やトレンドまでを網羅した形で紹介している。森本さんは、膨大な数の中からおよそ100種類のパンを選ぶだけでも大変な作業だったと語る。
自宅でも実践したい!ドイツ式「パンの時間」の愉しみ
『子供の頃は、早朝パンを買いに行かされるのが日課だった』と語るのは、駐日ドイツ連邦共和国大使館のシュテファン・メープス公使参事官。最近はドイツでも自宅でパンを焼く人が増えつつあると言うが、実はドイツパンを焼くのは大変な作業であることから、特に朝食用のパンは近所のベッカライ(パン屋)に買いに行くのが今も昔も一般的なのだそうだ。
ドイツの朝食では主に小型のパンを食し、夜に大型パンといった具合で、大型パンは薄くスライスして、ハムやチーズ、スプレッド、野菜やフルーツジャムなどと一緒に食す。シンプルで手軽ながらも、栄養はしっかりと摂れる。
ドイツのパン文化で興味深いのは、ドイツ南部のバイエルン、フランケン、チューリンゲン州の一部で浸透している「ブロートツァイト」という食習慣。これは「パンの時間」という意味で、3度の食事以外にコールドミールとともにパンを中心に食す。ハムやソーセージ類が豊富なドイツでは、やはりこれらもブロートツァイトに欠かせないが、ハーブなどを混ぜたクリームチーズのディップやスプレッドもある。
授賞式の後にはドイツパンの試食会も行われ、ビュフェ台には森本さんが日本各地にあるドイツパンの店から取り寄せた珍しいパン5種と一緒に、ボーデンゼー赤坂のスプレッドやハムが並び、筆者も「ブロートツァイト」を体験させてもらった。
バイエルンではビールと合わせるというが、ライ麦の味わいがしっかりしたパンや、ジャガイモで作られた珍しいパンに広げたディルの清涼感が引き立つクリームチーズのディップが、よく冷えたフランケンの白ワインがマッチしたことは言うまでもない。
そして、ケシの実の入ったほのかな甘さのパンは、最後にコーヒーとともに。美味しいドイツパンに会話も弾む、贅沢な午後のひと時となった。
森本智子さんはまた、今月12日に同じく誠文堂新光社から新たに発行された書籍『ドイツ菓子図鑑』の執筆も担当している。
誠文堂新光社
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