ビールをテーマに新たな魅力を発見! 北東バイエルンの旅
ビールが守った? フランケン地方の古い町並み
第二次世界大戦の敗戦国ドイツは、日本同様、戦争で多くの町が焼土と化した。世界遺産「レーゲンスブルク旧市街」は、駅や軍事施設があった新市街が攻撃の標的となって旧市街が守られた形だが、南ドイツのバイエルン州には不思議なことに、フライジングの「現存する最古のビール醸造所『ヴァイエンシュテファン醸造所』」をはじめ、東バイエルン地方にある「世界最古の僧院ビール『ヴェルテンブルク修道院』」や「最古のヴァイスビール醸造所の『クッフルバウアー醸造所』」をはじめ、歴史あるビール醸造所が数多く残っている。
とりわけ豊かな軟水と麦に恵まれ、古くからビール造りが盛んに行われていたのがフランケン地方。中世の佇まいを今に伝えるかつての帝都、世界遺産の町「バンベルク」も、そんなビール遺産が残る町の一つである。
1818年、人口わずか17,000人の小さな町バンベルクには、旧市街を中心に65軒のビール醸造所がひしめき合うように建ち並び、40,000hlものビールが製造されていた。古地図で確認すると、その数の多さが一目でわかる。
ビール醸造の工業化や後継者問題なども重なり、バンベルクにあるビール醸造所は現在は9軒のみとなっているが、この町でのビール体験は、やはり特別なものがある。
しかし、なぜこれほどまでに、伝統あるビール醸造所が残っているのか?
その理由を探ると、「第二次世界大戦の時、米軍は戦争で勝ってドイツを占領したら、ビール醸造所を乗っ取ろう!と目論み、ビール醸造所を攻撃対象から外した」のだという、興味深い話がある。
バンベルクのビール醸造所は、1902年にはその数を36軒にまで減らしていたが、それでも町の規模を考えれば、かなりの数。米軍が町を破壊しようとするものなら、歴史あるビール醸造所まで吹っ飛んでしまう。そう考えれば、旧市街そのものの攻撃が避けられた、という話にも頷ける。
ドイツのビール醸造技術は、それほどまでにアメリカにとって価値があり、魅力的なものだったというのが分かる。
世界最大のビアガーデン「ケラーヴァルト」
そうしたフランケン地方で「最もビールが消費されている町」が、バンベルクとニュルンベルクの中間にあるフォルヒハイムという町。今回のセミナーで、この町の歴史や見どころを紹介してくれたのが、フォルヒハイム観光局のニコ・シズラー氏だ。
フォルヒハイムという名が、初めて文献に登場したのは西暦805年。度々、王室選挙が行われていたという、フランケン地方の中でも特に古い歴史を持つ。人口およそ3万5000人のこの小さな町には、14世紀後半に築城された領主司教の城や城塞、ドイツで特に印象深い中世の木骨様式の建物が多く残る。
クリスマスシーズンともなると、国の重要文化財に指定された市庁舎前の窓は、アドヴェント・カレンダーに早変わり。クリスマスの天使が毎日カレンダー(扉)を開き、クリスマス・プロローグを届ける。
25以上の屋台が並ぶクリスマスマーケットが立ち、城のファサードで光のショーが行われるという。
このフォルヒハイム最大の特徴は、およそ2万平方メートルもの敷地面積がある世界最大のビアガーデン「ケラーヴァルト」。冷蔵庫がなかった時代、砂岩を掘ってできた洞窟をビール貯蔵として使用していた場所が、後にビールと料理が一緒に楽しめるビアガーデンとなった。
ケラーというのは、ドイツ語で貯蔵庫の意だが、フランケン地方では、一般的に「醸造所のビアガーデン」を指している。180年の歴史あるこのビアガーデンには、23のビアケラーが集まっている。
フォルヒハイムでは、この「ケラーヴァルト」をはじめ、町のビール文化にふれられるビールツアー、フランケン地方のグルメも堪能できるビール醸造所ツアーなど、様々な食体験を提供している。
週末には、ビアケラーを行き来する「カラーヴァルト・エクスプレス」が運行され、無料で利用できる。
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