そのオシャレで自由なライフスタイルで、今世界中から熱い視線が注がれている北欧ライフ。バルト三国の中でも特にオットリとした国民気質のエストニアでは、ツーリストでも肩を張らずにシティブレイクを満喫できる。
今回はエストニアの首都「タリン」と第2の都市「タルトゥ」に焦点を当てて、その楽しみ方をご紹介しよう。
エストニア第2の都市は「学生の街」
ペイプシ湖周辺を離れ、「オニオンルート」の起点となるタルトゥへと戻ってきた。
エマユギ川が静かに流れるタルトゥは、エストニア第2の都市。その歴史はバルト海の国々の中で2番目に古い。アラツキヴィの領主も「エストニアで最もエストニアらしい町」と言われるこのタルトゥに本宅を構えていた。
町のシンボルは、1632年にスウェーデン王のグスタフ2世が創設した「タルトゥ大学」。その後、タルトゥは「文教都市」として繁栄した。「知性」の象徴でもある大学には、1803年にカール・モルゲンシュテルン教授が開設したアート・ミュージアムや、今では伝説になっている「学生牢」がある。なんでもその昔、講義中に居眠りをした学生は、ここに2日間監禁されたそうだ。
「そんな昔の話はお構いなし」と言わんばかりに、市庁舎広場で映画のようなキスシーンを見せつけている「Kissing Students」。小さいながらも知性に溢れたこの「学生の街」は、開放感もたっぷりだ。
工場を改装したトレンディーなカフェレストラン「Aparaat」
13世紀に建造された「大聖堂」や、18世紀に造られた古典様式のラエコヤ広場のある市街地を離れ、ランチをしにやって来たのはタルトゥで暮らすリースさんイチオシのカフェレストラン「Aparaat」だ。
この店があるのは、かつて工場として使われていた建物の一角。内部を改装し、2014年にショップやレストランなどが集まる商業施設として生まれ変わったのだという。
どことなく社会主義時代を彷彿とさせる、ダークツーリズム好きには堪らない外観をしているが、内部は一転、ところどころにグリーンが飾られ、北欧らしい洗練された居心地の良い空間が広がっている。入口の近くにキッズスペースもあり、この店があらゆる人にオープンであることが感じられる。
人気メニューは、一つ食べればお腹がいっぱいになりそうな大きなハンバーガーやスープ。ラトビアのリガ中央市場で見かけた時にも思ったが、どうやらバルト海の国でもプレートに盛りつけた、いわゆる高級バーガーが若者のトレンドらしい。
でも、せっかくなら味わってもらいたいのが、中でつながった隣のベーカリー「ムフ」から届く焼き立て黒パン。「ムフ」は、エストニア国内で展開する人気の黒パン専門店で、初めて黒パンを口にした人手も病みつきになってしまう美味しさだ。
食事が終わるとテーブルに置かれる1冊の本。これは本の形をした箱になっていて、中に伝票が入っている。隣のプリントショップで作ってもらったオリジナルなのだそうだ。バラバラで支払う時は、お店のスタッフが人数分の本を抱えて持ってくる。いかにも「学生の街タルトゥ」らしい、センスの良さがうかがえる。
過去と未来を繋ぐ「エストニア国立博物館」
食事を終え、2016年10月にオープンした「エストニア国立博物館」へとやって来た。ここは旧ソ連の軍用滑走路だった場所に建てられた、長さ355メートル、幅72メートルの広々とした博物館である。2006年、若干26歳で国際コンペに勝利した日本人建築家の田根剛氏が、10年の歳月をかけて完成させた博物館として知る人も多い。
ここでは「記憶をつなぐ」をコンセプト。様々な展示を通じて、エストニアの歴史を未来へと繋ごうとしている。その建物の長さを活かした1階の常設展示室は<時間の回廊>になっていて、氷河期から現代に至るまで、時系列にそった展示が行われている。また、エストニアを言語から捉えた展示や、エストニアが独立を宣言した後の人々の暮らしが垣間見られる展示スペースなどもあり興味深い。
特筆すべきは「IT先進国エストニア」らしい展示方法だ。入口で手渡されるるICカードを設置されたボードにかざすと、いくつかの言語に変換される。残念ながら日本語には対応していないが、映像などにはその言語の字幕が表示される。市街地から少し離れているが、タルトゥを訪れたら足を運んでみたい博物館である。
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