ドイツ再統一から25周年に当たる2015年、ドイツ観光局では「感動のドイツ再統一」をメインテーマにしたプロモーションを行う。これを受け行われたプレス懇談会では、ベルリンの壁とドイツ再統一ゆかりの地を訪ねる旅を提案。そこで紹介された主なゆかりの地を、ルートに沿ってご紹介していくことにしよう。
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6.壁と統一ゆかりの地を訪れる
ベルリンで「ドイツ分断と統一の歴史の証人」に出会う
その一つが、ドイツ再統一の象徴にもなっている「ブランデンブルク門」だが、分断時代に唯一外国人が西ベルリンと東ベルリンの出入国できた「チェックポイント・チャーリー」とその横にある「壁博物館」、残されたベルリンの壁の一部を見ることができる「ポツダム広場」なども見逃せない。2015年には「冷戦博物館」と「スパイ博物館」のオープンのオープンも予定されている。
また、東西間の「冷たい戦争」の記憶が絶えず顔を覗かせる「壁の道」を、歩いてみるのはいかがだろうか。長さ160キロのこの周回は、かつて東ドイツの国境警備隊がパトロールに使っていた西側の「税関の道」と東側の「縦隊道」を結ぶ道。 かつての境界線をなぞるように、残された監視塔や博物館、記念の場所の近くを通る。未だ残る壁の痕跡や、歴史的に興味深い区間がたくさんある。
東西統一、そして平和と和解の象徴 ドレスデンの「フラウエン教会」
前身となる「慈母たちの教会」の老朽化に伴い、長い年月をかけて建設されたフラウエン教会だが、1945年、第二次世界大戦の空襲により破壊。民主化、そしてドイツ再統一を受け1994年に再建が始まり、完成したのは2005年のことだった。
瓦礫の欠片一つひとつをもとの場所に組み込むという“考古学的再建”が行われ、完成には11年の歳月を費やした。「世界最大のジグゾーパズル」と呼ばれる大復旧作業だったという。東西統一、そして平和と和解の象徴、フラウエン教会のまろやかで優しい曲線のフォルムからは、慈愛という言葉がひしひしと伝わってくる。その他、1989年1月13日に「平和フォーラム」が結成された「聖十字架教会」や、戦争に伴う「暴力と苦悩」に力点を置いたアルベルトシュタット地区の「ドイツ軍事歴史博物館」も、この機会に訪れておきたい場所である。その他の見どころは、こちらを参照。
東独民主化発祥の地の象徴、ライプツィヒの「光の祭典」
世界の流れを変えた出来事を記念した祝賀行事は多数あるが、中でも傑出したイベントとなっているのが、1989年10月9日の平和デモに因み毎年この日に行われているライプツィヒの「光の祭典」である。
アウグストゥス広場を中心とする特設ステージでは、東ヨーロッパの首脳や革命ゆかりの人物を招いてのスピーチ、激動の現代史を光と身体で表現するダンスパフォーマンスなどが行われている。この日、周囲の建物には革命の年「89」を象った文字が点灯し、その歴史的な出来事を偲んでいる。
また、ライプツィヒでは、その平和革命の原点となった「ニコライ教会」や、現代史の知られざる一面に触れられる「ルンデンエッケ」にも足を運んでみたい。ニコライ教会の入口では、平和革命を記念した展示も行われている。
ドイツ再統一25周年となる2015年は、ライプツィヒの成都1,000年に当たり、これを祝したイベントも目白押しとなっている。その他のライプツィヒにある壁と統一ゆかりの地については、こちらも参照。
エアフルトで見る独裁政治の負の遺産と21世紀の観光
そうした負の遺産を持つエアフルトだが、現在はドイツを代表する「バリアフリーの町」として注目が高まっている。
ドイツ観光局は現在、「全ての人に旅行を」をスローガンに成長著しいバリアフリー旅行を推進しているが、このエアフルトはドイツ・バリアフリー観光地共同事業体が特に推薦するバリアフリー旅行の町。2013年には、聴覚障害者用市内観光部門でドイツ旅行賞を獲得した。
エアフルト観光局は移動、視覚、精神障害者のために豊富なプログラムを用意し、ニーズに合せてプログラム提案。団体市内観光に特別仕様バスや市電の利用、身障者州立スポーツセンターで試合やトレーニング、交流なども可能となっている。このエアフルトのバリアフリー観光については、 2012年にドイツの国際放送局ドイチェ・ヴェレ(DW)でも紹介されている。
東西ドイツ旧国境線(ガイザ~ヴェーバーシュテット~ヘーテンスレーベン)
こうした旧国境線は現在、総延長1400キロの「グリーンベルト」となっており、5200種類もの動植物が生息。時間をかけてサイクリングやハイキングを楽しめる格好の場所となっている。
また、ヴェーバーシュテットとヘーテンスレーベンにある東西ドイツの旧国境線も同様、分断の悲劇を伝えるメモリアルとして公開されている。
ここでは西側が国境線のギリギリまできれいに土地が整備されているのに対し、東側の国境線近くには緑地帯が広がる。ここは西側への逃亡を阻止するため、国境警備隊がパトロールをしていた場所である。
ヴェーバーシュテットヘ行ったら立ち寄りたいのが、「トラビ」の愛称で親しまれる旧東独国民車トラバントの博物館「トラビパラダイス」だ。
実はこのトラビ、今でも非常に人気が高く、東ドイツ地域ではこの懐かしいトラビに乗って市内観光を提供している旅行社もあるほど。国が分断されていたとは言え、西も東もドイツ国民には違いはなく、自動車大国に生まれたDNAや自動車に対する情熱に変わりはない! ちょっと想像しただけでも息苦しくなる社会主義体制だが、そんな中でも豊かな自然に囲まれてオートキャンプを楽しんだり、トラビでドライブを楽しんでいた旧東ドイツ地域の人々の姿を思い浮かべると、何だかハッピーな気分になってくる。
マクデブルクに見る現代建築
そうしたマグデブルクのランドマークとなっている建造物の一つが、ドーム広場の近くにある2005年完成のフンダートヴァッサーの遺作「緑のシタデル」だ。
オーストリアの芸術家、および建築家のフリーデンスライヒ・フンデルトヴァッサーの作品の中で、恐らく「最も美しい」といえるこの建物の小さな塔の上には、黄金の玉が光っている。そして、窓は陽気に踊り、屋根には花が香る。マクデブルクにはまた、2003年に完成したビジュアル感抜群の全長918メートルというヨーロッパ最大級の立体交差水路橋がある。
冷戦の始まりポツダムの音楽祭
ドイツの音楽祭でも屈指の美しさと評されるこの「サンスーシー音楽祭」は2015年(6月12~28日開催)に第61回を迎え、庭園内の宮殿や様々なスポットで60余りのコンサートやオペラが行われる。また、サンスーシーと言えば8月の宮殿ナイトのイルミネーション(2015年は8月15日18時~)も圧巻。前夜の14日には、ポツダムフィルによるイルミネーションとコンサートも予定されている。
世界屈指のクリエイティブシティに生まれ変わったドイツ
ドイツのアートとしては、カッセルで5年に1度開催される現代アートの祭典「ドクメンタ」が有名だが、去る11月29日と30日には東京の六本木ヒルズで、ベルリンの最新のアートやデザイン、ファッションを紹介する音楽メディアアートイベント「BERLIN×TOKYO デザイン、アート、カルチャー展」が催され、足を運んだ方もいらっしゃることだろう。
ベルリンの壁崩壊から25年、旧東領のベルリンをはじめ、ライプツィヒやドレスデンから現代ドイツのアートを担う多くのヤングジャーマン・アーティストが輩出され国内外で活躍。また、歴史の記憶や移民による文化の多様性により、ドイツは若々しい世界屈指のクリエイティブシティへと生まれ変わっている。1969年に設立された「ドイツ・デザイン賞」は、ドイツ連邦経済技術省によって毎年開催されるドイツのデザイン分野において最も権威ある賞。2014年のドイツ・デザイン賞には、旧東ドイツ地域で生まれたカール・クラウス・ディーテル氏が選ばれている。今後はドイツ各地で開催されるアート関連イベントにも、是非ご注目頂きたい。
ホーネッカー書記長の別荘に泊まる
東ドイツ地域の市民が、平和革命で独裁者ホーネッカーを倒したのは1989年のこと。国家保安省の長であるミールケはホーネッカー書記長70歳誕生日に、ロストックから70キロの湖沼地帯にあるドレーヴィッツ湖の畔の狩りの館を贈った。
14ヘクタールの広大な敷地には、5室のスイートを有する藁葺の狩猟館と約50の休暇ロッジがあり、現在はリゾートホテル「ファン・デア・ファルク ナトゥアリゾート・ドレーヴィッツ」として営業している。狩猟館のホーネッカーが使用していたハイデ・スイートには、ソファや書斎机、肖像画などが当時のままで残されている。