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環境先進国であるフィンランドの主要産業は森林業。フィンランドでは、1886年に森林破壊が禁止した最初の「森林法」が制定されたが、2014年に施行された「森林法」では樹齢70年未満の木の伐採が禁じられ、木を1本伐採したら、その3年以内に5本の苗木を植樹することが義務づけられている。
フィンランドの人々ににとって森は心の拠り所。国民のおよそ80%が「伐採を増やすよりも、森林の生物多様性維持の方が重要」と考えている。
フィンランドの森に癒される
雪が降ってもお構いなし! フィンランドの人々は季節を問わず、週に1度は森へ出かける。
それを怠ると、メンタルも含む健康バランスが維持できなくなるのだという。
人の手が加わるフィンランドの森は、明るく健康的。春から夏にかけては新緑、秋には黄葉が人々の目を楽しませてくれ、風に揺らぐ木の葉たちが奏でる心地よい音色が心までも癒してくれる。
フィンランド人のルーツともいえる森は「自分が何者なのかを思い出させてくれる場所」でもあるのだという。
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公式のネイチャーガイドのリータ・ライネさんと一緒に森へ
この春、新型コロナウィルスの感染拡大により世界各地で多くの人々が外出自粛を余儀なくされ、ストレスを感じる人も少なくない中、もっとも上手に「おこもり生活」を楽しんでいるのはフィンランドの人々かも知れない。
自分の森を散策したり、家の中で森をイメージしながら「瞑想」していた、という人も少なくないことだろう。
森を案内してくれた公式ネイチャーガイドのリータさんは、ウェルネスのプロフェッショナルでもある。そんなリータさんがまず最初に教えてくれたのが、木に抱きついてそこからパワーを得るということだった。
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森へ行ったら木に抱きついてパワーをもらう
次にリータさんがよくやって来るというのが、大きな岩の前。ここで静かに瞑想をしたり、追憶しながら、心をデトックスするのだという。
地元では有名な場所なのか。苔のついた亀のような大きな岩の前には、祈祷台のような足場が組まれていた。ここで心のデトックスをしながら、静かに精神統一をする人も多いようだ。
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大きな岩の前で心のデトックス
リータさんと一緒に森を案内してくれたのは、近所でリンゴ農園を営むリータさんの友達のハンナさんだ。
何気ないおしゃべりを楽しみながらの散策中、ベリーの花を手にとって見せてくれた。ロホヤの森では、シーズンによってベリー摘みやキノコ狩りが楽しめるのだという。
さすがにハンナさんも自分の森を持っているというだけあって、その知識も豊富だ。単に学校で学んだというだけでなく、小さい頃から家族や友人とともに森に入り、そうした中でごく自然に知識として身についたに違いない。
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ベリーの花を見せてくれるハンナさん
「シベリウスの世界」でピクニックを楽しむ
森の中を歩いて、ロホヤ湖に浮かぶ小さな島が見える場所へとやって来た。
リータさん一押しのこのピクニック・ポイントには、シベリウスの交響詩《フィンランディア》そのものの景色が広がっている。
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交響詩《フィンランディア》の景色の中でのピクニック
森でのピクニックはあらかじめ予定されていたことだが、リータさんとハンナさんが背負っていた荷物が、小一時間の散策にしては大きなことが気になっていた。
が、ここに来て納得。リュックから手作りのサンドウィッチにお水やコーヒー、人数分のマグカップ、紙皿や紙ナプキンに、砂糖、その砂糖を入れる籐のカゴまで出てきた。
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すべて家から持ってきたピクニックランチ
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リータさん手作りのサンドウィッチは絶品
そして、さらにフィンランドではコーヒータイムに欠かせないシナモンロールや、ハンナさんの農園で絞ったアップルジュースまで用意されていた。どちらも開眼の美味しさだったが、それ以上にその温かみのある「もてなし」や、森への愛情が感動的だった。
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フィンランドのコーヒータイムに欠かせない「シナモンロール」
思い返せば、日本も昭和の時代はこれば当たり前だった。ペットボトルではなく水筒を持ち、遠足で出るゴミと言えば、おにぎりを包んでいたアルミホイルくらいだった。
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大きなリサイクル容器からアップルジュースを分けるリータさんとハンナさん
人数が多い時くらいマグではなく使い捨ての紙コップにして、砂糖もわざわざ籐のカゴではなくビニール袋に数個入れて用意すれば、荷物も軽くなって楽だろうと考えがちな現代において、森でも、自宅に戻ってからも極力ゴミを出さないために、労を惜しまないリータさんに頭が下がる思いがした。
と同時に、頭では環境保護を意識しながらも、使い捨ての生活から抜けきれていない、どこか頭でっかちの自らを反省した。
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人々に語りかける「ロホヤの森の番人」
人々を癒し、たくさんのことを教えてくれる森。そして、ロホヤの「森の番人」が、こう語りかける。
<森はいかがでしたか? もし、気に入ったら、次は友だちや家族を誘って来てください> と。
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