シシリアの旅

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シシリアの旅 (その5)

トラーパニ、セジェスタ、エリチェ、マルサーラ、モティア、セリヌンテ


ERICE(エリチェ)ノルマン城
3月17日にパレルモを発ち、西へ時計の逆廻りにアグリジェントへ向かいました。
トラーパニ、マルサーラ、カステル・ヴェトラーノ、シャッカ、を経てアグリジェントに着くコースです。

ゲーテの時代には、トラーパニの手前のセジェスタから南下して、カステル・ヴェトラーノからセリヌンテ、ここから海沿いにシャッカ、アグリジェントに向かいました。

パレルモからトラーパニまで約100km、バスで約二時間、片道12000リラ(約700円)。シシリアの旅はバスが安いので助かります。


セジェスタ


ギリシャ神殿と劇場で有名なセジェスタは、トラーパニより手前にありますが、普通のバスはトラーパニまで行かないと乗れません。また、エリチェ行きはトラーパニから出ますが、カルタゴの遺跡で有名なモティアへはマルサーラの手前にあっても、バスはモティアを通りません。

セリヌンテのギリシャ遺跡
セジェスタとエリチェはトラーパニから、モティアへはマルサーラからとバス会社の縄張りが決まっているようです。流石はマフィアの島といえるのでしょうか。勿論観光バスは別です。

セジェスタの神殿については、ゲーテも和辻哲郎も首をひねっています。まずその位置です。小高い丘の上に立ってはいますが、そこからさらに高いところに劇場と居住地域の跡が残っています。何故神殿が低いところにあるのか。次に柱に溝がないとか、神室が作られていないとか、この神殿は未完成ではないか、という説があります。そのため「謎の神殿」とも呼ばれます。
ギリシャ劇場に立つとはるかに海が見えます。なぜこんなに海から離れたところに住んだのか、これも謎だそうです。

マルサーラのカルタゴ博物館


エリチェ


エリチェはトラーパニの後ろに聳え立つ丘の上にある街で、古代はそのヴィーナス神殿によって知られていました。街の西南端にあるその神殿跡は、12~13世紀にノルマン人によって「カステッロ・ノルマンノ」という素晴らしい眺めのお城になっています。東に隣接してバリオ公園があります。

街へは東南端のトラーパニ門から入りますが、直ぐ側にあるのがマトリーチェ教会です。十四世紀初めに建てられたゴシックの教会です。鐘楼が離れて建てられているのが、私には、いかにもイタリアらしく思われました。

ここのカフェで失敗しました。bancoとtavoloという二つの値段があることを知りませんでした。「立ち飲み、立ち食い」と「座って飲食する」値段が違うのです。コーヒーを例にとるとbancoが2000リラに対してtavoloは4000リラでした。実に合理的ともいえます。


トラーパニ


トラーパニは西に突き出した岬全体が街になっていて、北へ出ても南へ出ても海が見える街です。旧市の中ほどにあるプルガトリオ教会の前では、楽隊が演奏し、教会の中は所狭しと「キリストがゴルゴダの丘まで十字架を担いで歩いた道行きの人形」が並べられていました。近づく復活祭への準備でしょうか。その人形はミュンヘンで見たナポリ?の人形にそっくりでした。両シシリア王国の首都はナポリ、副都はパレルモですから、この地方が本場なのかも知れません。

ERICE(エリチェ)ヴィーナス宮殿跡に
建てられた城(ノルマン城)の一部

マルサーラとモティア


マルサーラは日曜日でも観光案内所が開いていて、町中に英語で案内板があります。その説明を読むうちに遺跡の上に住んでいるような気持になりました。考古学博物館には、カルタゴの船が復元されています。ほんの少しの残骸からどうして復元できたのか、不思議な気もします。

この街からトラーパニの方へ少し戻った塩田に沿った島にカルタゴの遺跡があります。モティアの島で、マルサーラ酒を作っていた英国人のホイタッカーによって二十世紀の初めに発掘されたものです。ここにはしっかりと英伊語の説明板がありますが、原文は英語でしょう。島全体が遺跡で、時間をかけて見る価値はあったのですが、飲物一つ売る売店もなく、早々に引き上げました。

ここからもトラーパニの町からもエリチェの山の上の町がはっきりと望めます。この景色を眺めていると、カルタゴの遺跡からチュニス近郊の山を眺めたことを思い出しました。
カルタゴ人の好きな眺めなのでしょうが、我々日本人の好みとよく似ています。


セリヌンテ


セリヌンテまではマルサーラから鉄道でカステル・ヴェトラーノに行き(片道5500リラ)、そこからバスが往復しています(片道1500リラ)。お目当てのホテルが閉まっており、リュックを背負って東神殿に近い入口に行きました。三月二十一日のことだったので、まだシーズン・オフでホテルが閉まっていたのかも知れません。

ここの考古学公園は、入口に近い東神殿群と一キロほど離れたアクロポリに分かれています。南に海を臨み、アクロポリの広さは前日に見たモティア島がそっくり入っておつりがくるほどに思えました。和辻は汽車の便が悪くてパレルモの美術館で各神殿のレリーフを見るだけで満足し、またゲーテの頃には埋もれた遺跡であったのか、カステル・ヴェトラーノまで来て、ここには立ち寄らずシャッカへ直行しています。なおシシリアでは国立の施設の入場料は一律に8000リラです(2000年春現在)。

(2002年4月号)


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