【現地レポート】博物館の建設によって理解しやすくなったトロイ遺跡
トロイ博物館と合わせて見学すれば遺跡が解りやすくなる
トロイとはギリシャ神話にも登場する古代都市で、ギリシャ語でイリオスと呼ばれた。考古学では最初のトロイ建設は紀元前3000年頃とされており、その都市は大火災によって消滅した。紀元前2500年頃から第2都市の建設が始まったが紀元前2300年頃に外部から攻撃されて滅んでいる。
トロイはこの様に何度も再建されては滅ぼされ、紀元後1世紀までの間に9回も都市が建設されている。有名なトロイ戦争が起きたのは紀元前1700年頃の第6都市か、紀元前1200年頃の第7都市ではないかと推測されている。
トロイの遺跡巡りは、これらの地層を見て回ることがメインとなる。何千年も前の出来事を、地層を眺めながら推測するのである。神殿や祭壇があるわけではなく、石の壁や瓦礫を眺めて回る土埃のコースだ。あちらこちらにここは何時代の第何都市である、という立札があるが、それだけでは解り難い。
この度、世界遺産登録20周年を記念して、遺跡の近くにトロイ博物館が建設され、まもなくオープンする。館内には出土品はもちろんのこと、遺跡のジオラマやシュリーマンの発掘作業、トロイの歴史などが最新技術を駆使して展示されるので、博物館と共に遺跡を見学すれば遺跡巡りがより面白くなる。
叙事詩以外でも数々の劇作品や歴史書に記されたトロイのエピソード
トロイ戦争の話はギリシャ伝説とされていたが、紀元前6世紀以降はギリシャの吟遊詩人ホメロスの長編叙事詩「イリアス」と「オデュッセイア」がルーツとみなされるようになった。「イリアス」は10年間に及ぶトロイ戦争の話で「オデュッセイア」はトロイ戦争で生き残ったギリシャの英雄オデュッセウスの、その後の話になっている。
有名な木馬作戦のことは、3世紀頃のイズミール(現トルコ)出身の詩人クイントゥスが書いたギリシャ語の叙事詩「トロイア戦記」で語られている。「イリアス」ではトロイ王ヘクトールが、アキレス腱で有名なスパルタのアキレスに殺されるまでのトロイ戦争10年間を、クイントゥスの「トロイア戦記」はそれからギリシャ軍の木馬作戦によってトロイが陥落し、ギリシャ軍が帰国するまでが記されている。長い間トロイは神話上の空想の都市とされていたが、19世紀にシュリーマンがトロイ遺跡を掘り当てたことで実在した古代都市であることが判明された。
世界初の美女コンテスト
トロイ戦争は何故起こったのか。神話によると、それは女神たちの美女コンテストが原因だった。事の起こりは不和の女神エリスが、ある婚礼の席で「最も美しい方へ」と記された黄金の林檎を投げ入れたことだった。女神たちは我こそが一番美しい、と林檎を奪い合ったが、選ばれたのはゼウスの妻ヘラ、知恵の女神アテナ、美の女神アフロディーテだった。
ゼウスはこの件に関わりたくないので、トロイ近くのイダ山で羊飼いをしているトロイの王子パリスに審判を任せた。3人とも美しく、誰が一番かを決めるのは容易でない。そこでまずヘラが、自分を選んでくれたらパリスを世界最強の王にする、アテナは世界でも最も賢い王にする、アフロディーテは世界で一番美しい妻を与える、とそれぞれが約束をした。パリスは世界一美しい妻を望み、アフロディーテに林檎を渡した。
木馬作戦が10年に及ぶ戦争を終わらせた
当時、世界で最も美しいと謳われたのはスパルタの王メネラウスの妻ヘレネだった。アフロディーテはパリスをスパルタへ連れて行き、ヘレネを奪ってトロイへ逃げ去った。怒ったメネラウスがヘレネを奪い返すために起こしたのがトロイ戦争であり、なんと10年もかかったのである。ギリシャ随一の賢人オデュッセウスは長引く戦争を終わらせようと木馬作戦を考案した。
大きな木馬の中に勇猛果敢な戦士が隠れ込み、ギリシャ軍は陣営を焼き払って撤退したように見せかけた。一人残った兵士が、自分はギリシャ軍に裏切られて置き去りにされたこと、この木馬は神への捧げものであることを話した。
トロイ側はこれを信じ、木馬を町の中に入れて戦争が終わった、と祝杯を挙げた。真夜中にギリシャ軍が木馬の中から飛び出し、近くの島に隠れていたギリシャ軍もやってきて一夜のうちにトロイは陥落し、ヘレネは救出された。
地層を観察しながら太古の昔に思いを馳せる
神話と史実が混ざり合ったトロイ戦争の話。おかしな個所がたくさんあるものの、実際にあった話だと信じたい。2004年公開のアメリカ映画「トロイ」では、ブラッド・ピットがアキレス腱で知られるアキレスを演じて話題となった。撮影で使われた木馬は、トロイ遺跡への拠点となる町チャナッカレの港に置かれている。
トロイ遺跡入口の木馬は1970年代に造られたもので木馬の中に入ることもでき、遺跡で一番の人気者!肝心の遺跡の方は土や石の層を、色の違いや材質などを見比べて回るコースだ。遺跡入口前のミュージアムショップに詳しいガイドブックがあるので、それを読みながら回るとポイントが判る。さらにトロイ博物館を訪れるなら具体的な知識が得られ、より一層興味が湧くであろう。
取材協力:トルコ大使館 文化広報参事官室
テキスト&写真:沖島博美(旅行作家)
トロイ考古遺跡
オープン時間 | 4月15日~10月2日 09:00~19:30 |
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入場料 | 25トルコリラ |
住所 | Tevfikiye Köyü, Çanakkale |
電話番号 | +90 (286) 217 23 71 / 217 82 05 |
Eメール | canakkalemuze@kulturturizm.gov.tr |
アクセス | チャナッカレより乗り合いバスで30~40分(運賃は7トルコリラ) |
備考 |
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