バルト三国がロードショーを共催 ~人気のタリンはシティブレイク、2022年の欧州文化首都カウナス、ラトビアのライフスタイルを楽しむ
エストニア、リトアニア、ラトビアからなる「バルト三国」。これら3ヶ国の日本での政府観光局業務は、Foresight Marketing が受諾しており、商談会に先立って行われたセミナーは各局の日本代表を務める能登重好氏が行った。
能登代表によると、いずれの3ヶ国も日本人観光客数は順調な伸びており、2013年に比較するとおよそ2.5倍。中でも2016年から2017年にかけては、特にエストニアが少しリードした形での伸びを示している。
バルト海に面したエストニア、リトアニア、ラトビアの3ヶ国は、よく「3兄弟」に例えられるが、実は似ているようでも全く異なる性質を持つ国々である。今回のロードショーでは商談会の時間も設けられていたことから、能登代表のセミナーでは各国の最新情報と合わせ、ツアー造成のヒントとなるキーワードが挙げられた。
人気のタリンは週末を活用した「シティブレイク」で暮すような旅を
北ヨーロッパで最も保存状態の良い世界遺産の旧市街があるエストニアの首都タリンは、日本人にも人気上昇中のデスティネーションだが、能登氏はまず、日本からエストニアへのツアーがこのタリンに集中し過ぎていると指摘した。
タリンの扱いについては、その性質が隣国フィンランドのヘルシンキによく似ていることから、エストニア政府観光局としてはトランジットついでや「シティブレイク」での滞在を提案している。
これは週末にブティックホテルやアパートメントに滞在して、旧市街の散策やショッピングを楽しんだり、ハイキングをしに郊外まで足を延ばしてみる ≪暮すような旅≫ のことで、すでにヘルシンキで大成功をし、若い女性を中心に定着しつつある旅のスタイルである。
エストニア政府観光局では、エストニアの旅をタリンだけで終わらせない、より奥深い魅力に触れられる場所として、エストニア第2の都市タルトゥや第3の都市のパルヌ、民俗的そして言語的マイノリティーのセトやキヒヌ島、エストニア最大の島サーレマーなどを積極的にプロモーションし、これらの場所に絡めたツアー造成を呼びかけている。
さらに能登氏は「バラエティに富むエストニアの食文化」に触れ、それが体験できる場所の一例としてタリン近郊にある「オービク・ファーム」を挙げた。ここではシェフのアンツ・ウースタルが、地元の農家や周辺の森から集めた新鮮な季節の食材を使った料理が堪能できる。このグルメファームは、タリンからタルトゥ方面へ車でわずか45分ほどの場所にあるため、移動途中に立ち寄ることもできる。
また、エストニアの意外な側面として、ユネスコの世界無形文化遺産に登録されているのはフィンランドではなく、「エストニアのサウナ文化」であると紹介された。
2022年の「欧州文化首都」に選定されたカウナスの魅力
能登氏がよく「バルト三国の中で最も繊細な国」と表現するリトアニア。そのリトアニア第2の都市カウナスは、第二次世界大戦の最中に何千ものユダヤ人を救うため ≪命の査証≫ を発給した当時の日本領事代理、杉原千畝ゆかりの地として広く知られ、日本とリトアニアの友好をより強固なものとしている。
カウナスはまた、世界随一の ≪モダン建築の宝庫≫ で、ユネスコの世界遺産候補となっている。さらにユネスコから「クリエイティブ都市」に指定され、2022年の「欧州文化首都」にも選定されていることから、今後はカルチャー・イベントを含めさらなる注目が期待できる。
その他にもリトアニアには、旧市街が世界遺産に登録されている首都のヴィリニュスをはじめ、十字架の丘、バルト三国で唯一、四方を水で囲まれたトラカイ城といった見どころが尽きないが、移動する砂丘「クルシュー砂州」、田園を旅する「ホームステッド」といったユニークな自然にももっと着目したい。
さらに2018年から2019年にかけては、バルト三国で初となる「PACAI」のデザインホテルをはじめ、ヴィリニュスに120~200室規模の国際的なホテルブランドが続々とオープンを予定している。
ラトビアのライフスタイルを体験する
歴史が息づく古い街並みとモダンが融合したラトビアの首都リガは、世界的に知られるアール・ヌーヴォー建築の街。質の高いオペラやバレエが手頃な価格で鑑賞でき、美食家たちが集まるグルメなデスティネーションでもある。
近年、ラトビアのライフスタイルへの注目が高まっており、毎年6月の第1週末に野外博物館で開催される「民芸市」は特に人気が高く、ユネスコ世界無形文化遺産の「スイティー文化空間」や、ラトビアの伝統と文化に深く根付いた「夏至」の晩のイベントも訴求力があると能登氏は語る。
能登氏はまた、ツアーを造成する上でのキーワードとして、身体に優しい「新鮮なオーガニック素材」や、春だけに楽しめる「白樺の樹液」、「黒パン作り体験」や「クリスマスマーケット」なども挙げている。
さらにラトビアの中世が体験できる場所として、リガの北東40キロにあるスィグルダを紹介。そこから車で30分ほどのツェーシスにあるアーライシ湖上では、長間伝説とされていたラトガレ人が造った要塞(住居跡)が見つかっており、現在はユニークな考古学野外博物館となっていると紹介した。
今回のロードショーには、エストニア、リトアニア、ラトビアから計14団体が参加。東京で行われたワークショップには、およそ80名のプランナーが来場し、セミナーの後で活発な商談が行われた。なお、バルト三国の国々は、いずれも2018年に独立100周年という記念すべき年を迎えている。