ドイツ、市場回復に遅れが目立つも根強いファン層の後押しに期待
「ドイツ旅行展」は、旅行業界向けの商談会を軸に1981年からドイツ観光局が2年に1度実施しているB2Bイベント。コロナ禍(2021年)はオンラインでの開催を余儀なくされたが、2023年からは再びリアル開催となり、2025年で22回を数えた。2005年からは韓国(ソウル)と抱き合わせとなり、会期もコロナ禍を経て5月から11月に変更された。

2年に1度開催されているドイツ旅行展
B2Bイベントにしては「ドイツ旅行展」とは少々不思議な響きのネーミングだが、東西ドイツが再統一を果たした翌年の1991年から2003年までは、B2BとB2Cの混合イベントとして大々的に催されていた歴史を持つ。
とりわけ1993年からはドイツ観光局が本国から縦横25メートルもある大規模テントを輸入し、日比谷シティー(東京都千代田区内幸町)で消費者向け(B2C)イベントを開催した。今や日本各地で好評を博しているドイツビール祭り「オクトーバーフェスト」の、日本でのルーツである。
当時は、会期中に7~8万人を動員。ドイツビールはもちろんのこと、ステージでは民族音楽に偏らない、ドイツ文化の多様性が感じられる多彩なプログラムを展開し、出展者もテント内にPRブースを設け観光情報を提供していた。
物販も行われ、会場には協賛会社の「ポルシェ」や、現在は日本から撤退した「オペル」などの自動車も並んでいた。

ドイツ観光局 日本支局長 西山晃氏
「ドイツ旅行展 2025」には延べ13社のサプライヤーが出展し、うち12社が東京会場、8社が大阪会場で商談会を行い、東京では2日目にドイツ観光局が選定した最重要旅行会社13社と、お見合い形式の商談会も設けられた。
1990年代から2000年代にかけて自力でツアーを造成する旅行会社は数を減らし、かつてのような勢いこそ失われたものの、質の良いツアーが丁寧に造成される日本、とりわけ東京は出展者からの評価も高いと西山局長は胸を張る。
ドイツ観光局では、日本からの旅行者数は「緩やかに回復はしている」ものの、歯止めのかからない歴史的な円安は、物価上昇によるツアー代金の跳ね上がりも著しく、2026年はコロナ禍前の7割水準に留まると推測している。
そうした状況を鑑みると、引き続きハイエンド層にターゲットを絞らざるを得ないが、リピーター層の需要喚起を高めるため、SNSも「X」から「Instagram」へと移行し、それぞれのセグメントに刺さる情報提供にも尽力するという。

サプライヤーによるプレゼンテーションも行われた
商談会後のネットワーキングレセプションでは、出展者によるプレゼンテーションも実施された。
今年は、開設50周年を迎えた「ドイツ・メルヘン街道」が6年ぶりに参加。ベルリン観光局は、9月に続く今年2度目の来日となる。日本はスイスやオーストリアに次ぐ重要なマーケットであるザクセン州立歌劇場(ゼンパーオーパー)も、前回に続けて出展となった。
また、ドイツ観光局の重要なパートナーであるルフトハンザ ドイツ航空も出展し、この秋にミュンヘン/羽田間に導入した新コンセプト「アレグリス」を紹介した。
ドイツ観光局 「ドイツフェスティバル 2025」にブース出展
ドイツ観光局は現在、B2C向けのイベントは実施していないが、ドイツ関連のイベントでブース出展という形で新たなマーケット層の開発に尽力をしている。
その一つがドイツビールやドイツ料理、ドイツ雑貨やドイツ人アーティストなど、ドイツの魅力が4日間にわたり存分に楽しめる「ドイツフェスティバル」だ。来場者は5万人(2023年度)規模におよぶ。

ドイツ観光局もフェスティバルに出展
2025年は「ドイツ・メルヘン街道開設50周年」と、新たな世界遺産に登録された「ルートヴィヒ2世の城」をテーマに、関連展示や体験コンテンツを展開。
また初日にメディア向け懇親会を催し、ドイツさらながらの雰囲気やクオリティーの高さを関係者にアピールした。
「ドイツフェスティバル」は、2011年に「日独交流150周年」のクロージングイベントとして、ドイツ連邦共和国大使館が有栖川記念公園(東京都港区南麻布)で開催した「ドイツフェスティバル~絆をつなごう ドイツと日本」を起源とするイベントで、それが好評を博し、翌2012年から会場を都立青山公園に移して開催されている。

駐日ドイツ共和国大使館 マルティン・フート公使とサーキュラーちゃん
初日のオープニングイベントでは、駐日ドイツ共和国大使館からマルティン・フート公使とともに、大阪・関西万博で話題になったドイツパビリオンのキャラクター「サーキュラーちゃん」がサプライズで登場。雨の中での開幕となったが、黄色い声とともに一斉にフラッシュが焚かれた。

ドイツフェスティバル運営事務局代表の森本智子氏
ドイツフェスティバル運営事務局の森本智子代表によると、この「ドイツフェスティバル」は特定の地域に偏らない、ドイツの様々な全面に押し出したプログラム構成に努めているという。
今年は初出店ブランドや協賛企業なども加わり、プログラムもさらにバージョンアップ。提供されている食事類も、メニューの重複を避けるため事前に実行委員会でチェックを入れているという。
特筆すべきは、本物のドイツ好きが集まるという点。おもしろいことに物販では、なぜか高級時計やドイツ製の掃除機がよく売れるのだという。
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配信元:ドイツフェスティバル/YouTube
ドイツ観光局は、過去年に「ドイツフェスティバル」の会場で実施した<観光に関するアンケート調査>の結果を発表しているが、その調査では「ドイツで行ってみたい、またお気に入りの町は?」という質問に対し、寄せられた地名はドイツ全土にある170ヶ所以上にものぼり、西山支局長も「日本の旅行消費者意識が大きく変化していること、さらに日本が成熟したマーケットであることを裏付ける結果となった」と、期待感を表していた。
なかなかアウトバンドにとっては厳しい状況が続いているが、「ドイツ旅行展」という形でドイツ観光局が長年にわたり育ててきた、ドイツの真の価値を知る根強いファン層の後押しに、大いに期待したいところだ。
