フランケン地方を巡る旅 ~ 古城と宮殿を求めて その1.ローテンブルク

市庁舎塔から見下ろすマルクト広場(ローテンブルク)
その1.ローテンブルク Rothenburg o.d.T
フランクフルトからローテンブルクへ
日本からフランクフルトへの直行便は日本航空、全日空、ルフトハンザ・ドイツ航空の3社があります。現在いずれもフランクフルトの到着時間は17時から18時の間になっています。
フランクフルトで一泊し、翌朝に中央駅脇から出ているロマンティック街道バスに乗ってローテンブルクまで行く場合は午前9時発となります。このバスは2019年から毎日の運行ではなく、水曜、土曜、日曜の週に3便のみとなりました。鉄道移動の人が増え、ロマンティック街道バスを利用する人が少ないので減便になったようです。

ロマンティック街道のバスが停まるシュランネン広場(ローテンブルク)
フランクフルトから電車でローテンブルクへ向かう場合はヴュルツブルクとシュタイナハで乗り換えて3時間から3時間半ほどです。夏場であれば21時頃まで明るいので、飛行機がフランクフルトに到着したら電車でヴュルツブルクまで行ってしまうのは如何でしょうか。
空港に隣接する長距離電車用のフェルンバーンホーフFernbahnhofからニュルンベルク行のICE特急が1時間に1本の割合で出ており所要時間はヴュルツブルクまで1時間半弱です。遅くとも21時頃にはヴュルツブルクに着きますので時差ボケを直すため、最初の日に頑張ってみませんか。

フランクフルト空港フェルンバーンホーフの案内
到着した日にここまで移動しておけば、翌日はローテンブルクへ昼前に着くことができます。あるいは午前中はヴュルツブルクで世界遺産のレジデンツを見学し、午後から移動するのも良いでしょう。ヴュルツブルクからローテンブルクまではシュタイナハでの乗り換え時間をたっぷり入れても1時間15分くらいです。

葡萄畑の丘が迫るヴュルツブルク駅
町全体が中世博物館のようなローテンブルク
ローテンブルク駅から旧市街までは徒歩8分ほどです。アンスバッハ通りから旧市街へ向かうと、まるで絵本から抜け出たような市門のレーダー門Rödertorが目に飛び込んできます。何重にもなった門を潜り抜けると、そこから先は中世の世界。赤い屋根の可愛らしい家が軒を連ねています。
レーダー通りを進むと、またまたおとぎの国のようなマルクス塔が現れます。さらに進むと突然視界が開け、大きなマルクト広場に到着します。

両脇に見張り番小屋があるレーダー門
マルクト広場には、町の規模にしては立派すぎる程の大きな市庁舎が聳え、かつて帝国自由都市だったことを偲ばせてくれます。
広場北側の白い建物は市参事会員たちの宴会館でした。窓に仕掛け時計があり毎日11時から15時、そして20時から22時の間の正時になると鐘が鳴って窓が開き、ティリー将軍と老市長ヌッシュが現れます。

白い館は市参事会員の宴会場だった
30年戦争で町が包囲された時、老市長が3リットルのワインを一気飲みして将軍の許しを請い、町を救った故事を表しています。この地方で造られるフランケンワインは美味しくて何杯でもいけそうですが、3リットルは多すぎますね。
市庁舎の塔には登ることができます。最初は余裕のある螺旋階段ですが、段々狭くなり人とすれ違うことができません。最後は階段というより梯子の様でしかも垂直に近い状態です。ここを頑張って登りきると眼下に開ける絶景に息を呑みます。360度、どこを眺めても美しい風景が広がっています。

市庁舎北側に聳える聖ヤコブ教会
北側に見えるひときわ大きな赤い屋根は聖ヤコブ教会です。後から訪れてみると内部のホールが立派でした。1311年から1484年まで、170年以上もかかって建設された大教会です。
主祭壇も美しいのですがホールから見えない所、西側の高内陣にある木製祭壇「最後の晩餐」は見逃せません。15世紀から16世紀にかけてフランケン地方に多くの作品を残したヴュルツブルクの木彫師ティルメン・リーメンシュナイダーの傑作で、これを見るためにローテンブルクを訪れる人も少なくありません。

ヤコブ教会にあるリーメンシュナイダー作「最後の晩餐」
博物館めぐりは興味深い
ローテンブルク博物館を訪れると、ヌッシュが飲んだとされる大きなグラスジョッキの複製が展示されています。
旧ドミニコ会修道院だった建物の中に石器時代から19世紀までの槍や剣、鉄砲が並び、武器の歴史が判ります。13世紀のままの状態で保存されている修道院の台所は圧巻です。

修道院の台所は13世紀のもの
この町に魅了されて移り住んだ19世紀末のイギリス人画家、アーサー・ワッセの絵が数点展示されています。
何度眺めても素晴らしくて引き込まれていきますが、当時と変わらぬ風景が町の中に見られるのもローテンブルクならでは、です。

アーサー・ワッセの市庁舎入口
市内にある博物館の中で世界的に有名なのが中世犯罪博物館です。中世ヨーロッパの司法史に関する2000点以上の展示品が見られ、世界中から中世司法研究者がやってきます。
入口の横に、罪人を入れ川に沈めてこらしめたという篭が展示されていますが、館内にも何種類かの篭があります。

喧嘩をした二人はこの板に首と両手首を挟んで町に晒された
首用と両手首用に3つの穴が空いているのは喧嘩した二人を戒める板です。「鉄の処女」と呼ばれる内側に鉄の楔(くさび)が一面打ち付けられた拷問道具には身震いがします。
軽い罪を犯した人は辱めの鉄面をかぶせられてマルクト広場に立たされました。その晒し台は、現在もその場所にあります。

恥辱の仮面でマルクト広場に晒された
皇帝コンラッド3世によって建設されたローテンブルク
ところでローテンブルクRotenburgとは赤Rotい城Burgという意味ですが、城などどこにあるのでしょうか。
それは町の西端、タウバー渓谷に突き出た部分にありました。マルクト広場から西へ、ヘレンガッセを下って行くとブルク門Burgtorがあります。そこを出るとブルクガルテンと呼ばれる庭園が広がり、記念碑が立っています。
12世紀半ば、この場所に神聖ローマ皇帝コンラッド3世が城を築きました。現在残っているのは城の土台の一部と、何度も修復を繰り返して保存されてきた礼拝堂のみです。

1142年にコンラッド3世が築城した記念碑
城はブルク門でしっかり防御されていましたが、徐々に城門の外へ集落が形成されていきました。集落は発展し続け、12世紀後半には皇帝フリードリヒ1世によって都市権が与えられました。
しかし城はコンラッド3世の時代にしか使われず、その後は自然に消滅していきました。1356年のバーゼル大地震で崩壊したという説がありますが、30キロメートル以上離れているので疑問視されています。

城があったブルクガルテン
町は主に3段階にわたって拡張された
12世紀末に町が形成されると13世紀初頭に市壁が建設され、城塞化しました。この第1市壁の中で今でも残っているのはマルクス塔Markusturm とヴァイサー塔Weißer Turmです。
マルクス塔と背後のレーダーアーチMarkusturm u. Röderbogenは絵葉書やポスターでよく目にします。町がさらに発展すると自治権を持つようになり、13世紀後半には帝国自由都市になりました。
新たな第2の市壁が建設され、マルクス塔の先、レーダーガッセ通りの突き当りに第2市壁のレーダー門が築かれました。この門は30年戦争の1649年に現在の姿になりました。駅から来ると、この可愛らしい門を最初に目にします。

マルクス塔とレーダーアーチ
広がった町の南にはジーバー塔Siebersturmが建てられました。塔の前に小さな平らの広場があり、プレーンラインPlönlein(小さな平らな場所)と呼ばれています。
広場の左手にはタウバー渓谷へ下りる道があるので分かれ道になっています。ジーバー門の外にあった救済病院Spital地区が14世紀後半に市の中に取り込まれました。
その後、南へ突き出した第3の市壁が建設され、町の北西端にあるクリンゲン塔Klingentorあたりが整備されてローテンブルクは現在の輪郭になりました。

プレーンライン(左の門はジーバー門)
市壁の上を歩いてみよう!
タウバー川渓谷に面した町の西側部分は直ぐ下が深い谷になっているので市壁はありません。町の北西端にあるクリンゲン門から東側のレーダー門を通って南のシュピタール門に至るまで、ぐるりと市壁で囲まれているので上を歩くことができます。市内観光の際に是非、一部分だけでも歩いてみませんか。

市壁の上をグルッと歩くことができる
町並み保存のために寄付をした人々のプレートが壁にはめられています。最初はレーダー門近くにプレートがありました。町に爆弾を落とした国の人々が目立ちましたが、今では世界各国の人々が寄付をし、壁のどの部分でも見られるようになりました。日本人の名前が多いのも嬉しいことです

フランクフルトに支社があるヤンマーディーゼルの寄付
シュピタール城塞と碑文
14世紀末に建設されたシュピタール門Spitaltorは、1586年に高い門塔と堅固な堡塁が追加されました。
この年代になると防御力は強化され、堡塁の中に大砲が設置されました。ローテンブルクで最も堅い守りの門です。一番外側のアーチの上にラテン語の文字が見られ、 PAX INTRANTIBUS SALUS EXEUNTIBUS と書かれています。

シュピタール堡塁
1586年に門が補強された時、町が旅人の安全を願ってこの文字を刻みました。東山魁夷画伯が彼の著書『馬車よゆっくり走れ』の中で訳したのは「歩み入る者に安らぎを、去り行く人に幸せを」でした。画伯の見事な和訳で有名になりましたが、これを刻んだローテンブルク市の温かさを感じますね。

ラテン語の碑文
シュピタール門からタウバー渓谷へ下って行くと、ローテンブルクの絶景が現れます。ローテンブルクには至る所に絶景があるので、その1つと言うべきでしょう。
ドッペルブリュッケDoppelbrücke(二重橋)と呼ばれる古い石橋を手前に高台の町が背後に現れます。東西の通商路として早い時期に最初の石橋が建設され、高さの調整で14世紀にその上にまた橋が建設されて二層のアーチ型石橋になりました。

ドッペルブリュッケと高台の町
プレーンラインの分かれ道を右へ下るとこの場所に降りてきます。絶景で溢れるローテンブルク最後の思い出にして下さい。
Hiromi Okishima
古城街道協会
Die Burgenstraße e.V.
住 所 | Pretzfelder Straße 15, 90425 Nürnberg |
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電 話 | +49 (0) 911 881838-00 |
U R L |
ローテンブルク観光局
Rothenburg Tourismus Service
開館時間 | 月~金 9:00~17:00 |
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住 所 | Marktplatz 2, 91541 Rothenburg ob der Tauber |
電 話 | +49(0)9861 404-800/404-529/404-529 |
Eメール | info@rothenburg.de |
U R L |
ホテル・アムベルガー

ヴュルツブルク中央駅前から出るバスの殆どがホテル近くに停まる。3つ目のテアタープラッツ下車。駅から歩いても10分ほど。世界遺産のレジデンツにも近い三ツ星ホテル。
Hotel Amberger Würzburg
住 所 | Ludwigstraße 17-19, 97070 Würzburg |
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電 話 | +49(0)931-35100 |
Eメール | reservation@hotel-amberger.de |
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アクツェント・ホテル・シュランネ

ローテンブルク旧市街の北側、ロマンティック街道バスの停留所シュランネ広場にある。居酒屋として長い歴史があり、食事が美味しくて地元の人々が集うレストランになっている。近年内部が改築されてホテルが備わった。
AKZENT Hotel Schranne
住 所 | Schrannenplatz 6, 91541 Rothenburg ob der Tauber |
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電 話 | +49(0)9861 9550-0 |
Eメール | info@hotel-schranne.de |
U R L |
ローテンブルク博物館

Rothenburg Museum
開館時間 | [4月~10月]10:00~17:00 |
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入 館 料 | EUR 6.00 |
住 所 | Klosterhof 5, 91541 Rothenburg ob der Tauber |
電 話 | +49(0)9861 939043 |
Eメール | museum@rothenburg.de |
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中世犯罪博物館

Mittelalterliches Kriminalmuseum
開館時間 | 10:00~18:00 ※入館は閉館45分前まで |
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入 館 料 | EUR 9.50 |
住 所 | Burggasse 3-5, 91541 Rothenburg ob der Tauber |
電 話 | +49(0)9861 5359 |
Eメール | info@kriminalmuseum.eu |
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