3名峰を正面に望む景勝地「シーニゲ・プラッテ」
名峰を眺めながら山のご馳走に舌鼓!
旅では、ミシュラン星付きやお洒落なレストランで、洗練された創作料理などを味ってみるのも一つの楽しみではあるが、やはりその土地でしか味わえない郷土料理も大きな魅力。その一皿にそこに暮らす人々の知恵や歴史、そして風土がギッシリと詰まっているのだから、「B級」だなんて言葉で一蹴りにされては悲し過ぎる。
細切りにしてから茹でたジャガイモを、パンケーキのようにこんがりと焼いた「レシュティ」は、スイス各地で味わえる国民食だ。もとはチューリヒの農村部の朝食が発祥と言われ、それがベルンやアルプス地方に伝わり、「レシュティ」という名で呼ばれるようになった。
アイガー、メンヒ、ユングフラウにグリンデルワルトの谷を正面に望むテラス席のある山岳ホテルのレストランでは、この伝統のアルプス風レシュティが3種類の中から味わえる。
その中から今回私が選んだのは、レシュティに農家風焼きソーセージとタマネギのソースを添えたシンプルな一皿(Älpler Rösti ~ Feine Rösti mit urchiger Bauernbratwurst an Zwiebelsauce)。小ぶりとはいえ、皿一面にジャガイモが敷き詰められ、ちょっとボリュームある一品だが、ふんわりとした中にも、こんがりサクサクとした食感も楽しめるジャガイモは、なかなかクセになる味わいである。
しかも体を中から温めてくれる作用もあるので、寒さが厳しく、塩分濃いめの味付けになりがちな山間部の食卓には、欠かせない定番食材でもある。
たかがジャガイモ、されどジャガイモ。スイスのジャガイモ料理は、奥が深くて特に美味である。
意外に思われるかも知れないが、実はスイスは知る人ぞ知る「フルーツ天国」でもある。国内の各地でリンゴやイチゴ、桃、ブルーベリーやサクランボなどが栽培され、そうした果物から造られる果実酒もたくさんある。中でも、チーズフォンデュの香りづけにも使われるチェリー酒「キルシュ」は有名である。
そんなスイスを夏に訪れるなら、ぜひ味わってみて頂きたいのが「アプリコットタルト」。6月下旬から9月初旬に栽培されるアプリコットは、主に蒸留酒の原材料として使われているが、夏場には山のレストランで甘酸っぱいアプリコットを惜しげも無く使った、絶品手作りケーキやタルトが楽しめる。
もちろんシーニゲ・プラッテ山岳ホテルのレストランで、この手作りアプリコットケーキも味わえるが、ここではもう一つお土産にお勧めしたいホテル自家製の「山のチーズ」も、忘れずに入手しておこう!