世界遺産カッパドキア
奇岩の斜面を、まるで砂時計のようにすべり落ちる雪。ここはトルコ中央部、中央アナトリア地方に広がる真冬のカッパドキア。複合遺産「ギョレメ国立公園とカッパドキアの岩窟群」を有し、とりわけ春から秋にかけて国内外からの多くの観光客が集まるトルコ屈指の人気を誇る観光地である。
このカッパドキアは、トルコ人監督のヌリ・ビルゲ・ジェイランがメガホンを取り、第67回カンヌ国際映画祭(2014年)で最高賞となるパルムドールを獲得した映画『雪の轍』(原題:Kış Uykusu)の舞台として知られ、壮大な歴史と文化が築きあげた浪漫に溢れている。
カッパドキアという地名は、ペルシア語で「美しい馬の地」を意味する“Katpatuk”に由来。火山灰の台地が風雨による侵食を受け、長い年月をかけて異世界を感じさせるその奇怪な造形をつくり上げた。洞窟に残る壁画から推測すると、火山活動は少なくとも新石器時代まで断続的に続いたと見られている。
そんなカッパドキアにはキノコ型、円柱型、尖頭型など様々な形をした奇岩群が数多く点在。その昔、妖精が暮らしたという伝説が残るこの地は、トルコを代表するパワースポットとしても知られている。
そうしたパワースポットには、まるで吸い寄せられるかのように人や物が集まり、その結果として様々な文化が生まれる。「聖なるもの」もその一つである。
“見てはならない” キリスト教徒の聖域
カッパドキア地方に人が住み始めたのは先史時代にまで遡るが、4世紀頃からローマ帝国や異教徒の迫害から逃れようとするキリスト教徒が隠れ住むようになった。カッパドキアに「キリセ」と呼ばれるキリスト教の岩窟教会が数多く残るのは、そのためである。
そうした約30の岩窟教会が保存状態のよい壁画と共に残っているのが、トルコの人々が「見てはならないもの」を意味するギョレメと名付けた村の「ギョレメ野外博物館」である。
岩をくり貫いて造られた教会の内部は、丹念に描かれた色鮮やかな壁画で飾られている。中でもギョレメ野外博物館にある「カランルック教会」に残る壁画は、思わずため息がこぼれるほど見事である。
(つづく)
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