掲載日 : 2017年06月23日

写真 : 筆者撮影

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遥かなる時を超えたトルコ絨毯の世界


シルクロードの要衝カッパドキア

アジアとヨーロッパを結んだ交易路「シルクロード」。シルクは中国から陸と海の2つのルートを通り、ヨーロッパ各地へと広がっていった。中でも重要な中継地点となっていたのが、トルコのカッパドキア地方である。



カーペット商人

商人をモチーフにしたトルコ絨毯



11世紀のセルジューク朝時代には商人らがこの交易路を盛んに行き交い「キャラバンサライ」と呼ばれる隊商宿が増加した。カッパドキアでは、特にカイセリとアクサライの隊商宿が有名である。この隊商宿に商人は3日間、無料で宿泊できたという。

一面の銀世界と静寂に包まれた真冬のカッパドキアでも、そこに漂う空気感から当時の歴史絵巻が目に浮かぶようである。


世界最高級と謳われるトルコのキリム

そんな交易の中継地点として栄えたカッパドキアを代表する産業が「キリム」や「絨毯」。トルコのキリムの起源は古く、一説によると紀元前6~7000年頃にまで遡ると言われている。

トルコ人のルーツは、中央アジアの騎馬民族。その遊牧時代からキリムを生活の中で用いていた。また、暮らしに華を添える装飾品ともなっていた。



代表的なカッパドキアの図柄

毛色の違う羊毛を使ったカッパドキア伝統の絨毯



トルコでは、織り子の手により一つ一つ糸を結んでいく「ダブルノット」で織られているため、シングルノットで織られるペルシャ絨毯よりも丈夫で、耐久性に優れているのが大きな特徴でもあり、トルコの人々にとっての自慢でもある。柄はリバーシブルになっていて、結び目は使えば使うほど締まる。

しかも家庭で洗濯でき実用的。キリムや絨毯に生活用品を包み、ラクダの背に載せて移動する遊牧民や旅人を想像するだけで浪漫を掻き立てられる。まさにインテリアと実用性を兼ねたオシャレなテキスタイルである。
また、日本の風呂敷のように布で物を包んで運ぶという風習から、同じアジアにルーツを持つ民族なんだと親近感も湧いてくる。



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素早く一つ一つ糸を結んでいく織り子



キリムや絨毯の素材は、主にシルクや天然の羊毛。そのため表面がサラッとしていて、夏でも暑さは感じられないそうだ。結び目がしっかりしているので、家具を置いても跡が付かない。それどころか「猫が歩いても足跡すら残らない」とガイドは胸を張る。




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キリムや絨毯の主な素材は天然のウールやシルク



トルコを代表する絨毯ブランドと言えば「ヘレケ」。トルコの人々にとっても憧れのブランドで、トルコの男性は大金を叩いてヘレケの絨毯を買うために、結婚前にひたすらお金を貯めるそうだ。

イスラム教の国では、古くから結婚の際に新郎が新婦にゴールドを送る風習があるが、トルコではキリムや絨毯がそれに相当する。トルコの人々にとってはキリムや絨毯は、「財産」として位置づけられているためである。



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上質なシルクで織られたヘレケの絨毯は素人目でも光沢が違う



そんなトルコのカッパドキアにある絨毯工房で、日本と出会った。それは元東京藝術大学の学長で、日本画家でもあった故・平山郁夫先生のデザインからパターンを起こしたシルクの絨毯だ。



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壁に飾られた平山郁夫先生との記念写真



平山先生がこの工房を訪れた際にトルコをイメージしたデザインを依頼したところ、トルコから日本がいつも見えるようにとの願いを込め、その目に映る日本の心「富士の山」を描いたのだという。



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東京藝術大学の学長だった故・平山郁夫先生のデザインを基に制作されたキリム



平山先生はもう一つ、シルクロードを往くキャラバンの姿が映る目もデザイン。仏教やシルクロード、そして悠久の歴史を壮大に描き続けた平山先生らしい作品である。


(つづく)



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