どうなる?香港観光
さて、香港が魅力ある経由地となるためには、まず香港を経由しようとする観光客が香港に期待するものは何か、を考える必要がある。それは、中国から香港に入った場合、ホッとするような西欧風な生活環境か、お土産品の買い物か、美味いものを食べるためか、それともロマンティックなナイトスポットか・・・、競馬か、ゴルフか、香港映画か、それとも博物館か・・・?
ここで考えなければならないことは、通過客にはあまり時間的な余裕がないということである。
「いや、多彩な魅力を提供して香港に少しでも長く滞在してもらうのだ!」 という議論がある。それは議論として尊重すべきだが、現実の問題として、他に目的地をもつ観光客が香港で過ごせる時間には限りがある。半日とか、せいぜい1、2泊の時間しかない「通過客」が香港に期待するもの、つまり、観光客があえて香港を通過する目的は、実はハッキリしているのである。市場に浸透しているアトラクション・イメージに惹かれるのである。それが香港通過の目的となる。
一般的にいって、時間的に余裕がない時には市場にあまり知られていないものを積極的にトライすることはない。幸か不幸か、香港の「ショッピング」と「グルメ」の誘致力は現在なお飛び抜けて高い。通常の場合、それが香港通過の目的となるのである。また、実際問題として、時間的な制約からそれらを楽しむのが精一杯なのである。後は、しいていえば、西欧的な雰囲気に浸ったり、もしくは、消されつつある英国の名残を懐かしむというようなこともあるかもしれない。
いずれにしても、残念ながら通過客の場合、香港の観光魅力の『多様性』は実感されないままに終わる可能性があるのである。ということは、「ワンダーランド」を実感してもらえないということにも通ずる。香港を何回も通過する観光客、また、香港にしか興味がなく、香港だけを楽しむためにやって来る観光客も、旅行目的ということになると殆どが「ショッピング」と「グルメ」特に中国料理を楽しむことになってしまい、なかなかそれ以外の新しい魅力、つまり「ワンダーランド」を形成するその他の要素を旅行目的にしてもらえないのである。
その理由はただ一つ、香港のアトラクション・イメージに定着していないからなのである。
「トキメキがとまらないワンダーランド」を空転させないために、言い換えれば、香港の豊富な魅力の『多様性』を効率的に市場に浸透させ観光誘致力を持たせるにはどうしたらいいのか、ワンダーランドを形成する9つの要素を手当たり次第に取り上げて宣伝していれば、香港はいずれ心がトキメク魅力あるワンダーランドとして認知されるのだろうか、また、そうなったとして、それら数多いワンダラスな魅力を実際に経験しようという広汎なニーズが市場に巻き起こるのだろうか、今は、そんなややっこしいことは考えずに、ただ「ワンダーランド香港」を唱えながら、「香港には多様な魅力が溢れているのだ」と言い続けていれば自然に香港が見直され誘致度が高まるのだろうか、・・・というような問題が気になって仕方がないのである。
その背景に、さらにもう1つ気になる点がある。
先にも述べた通り、「ショッピング」と「グルメ」は根深くイメージに浸透していて、香港の売り物としては、余程のことでも起らない限り、イメージ的には殆ど永久に不滅のように思える。将来なにかマイナス要因が発生してその魅力に陰りがでるようなことになったとしても、香港の「ショッピング・パラダイス」、「グルメ天国」というイメージが消滅し、香港観光の楽しみから完全に抹殺されてしまうまでには何年もの年月を要しよう。しかも、その2つの売り物が同時に消滅してしまうことは、中国への返還後、何が起こっても先ず考えられない。