ドイツの世界遺産に仲間入りした「エルツ山地鉱業地域」と「アウクスブルクの水管理システム」
エルツ山地(クルスナホリ)の鉱業地域
新たに世界遺産に加わった「エルツ山地」は、ドイツ東部ザクセン州とチェコの国境にまたがる中級山地。チェコ語ではクルスナホリと呼ばれるが、「エルツ」はドイツ語で鉱石を意味している。
この地に中世に興った鉱業は20世紀に入るまで存続し、特異な文化景観を作り上げ、数々の技術革新をもたらした。これらは現在も景観や見学可能な鉱山、博物館といった22の構成要素(うち5つはチェコ側)を通じて体験できる。
エルツ山地のフライベルク付近で銀鉱が発見されたのは1168年のこと。鉱業の歴史はそこから始まった。15世紀末にはシュネーベルクやアナベルクをはじめとする町の多くが発展し、特に1460年から1560年まで欧州有数の銀産出地となった。
また、錫や鉛、鉄、コバルト、ビスマス、ウラン、ニッケルが採れ、非金属の石灰、カオリン、石炭なども採掘され、1968年まで操業が続いた。中でもマイセン磁器にも欠かせない青色顔料(コバルト)は18世紀まで欧州市場のトップを占め、世界中に輸出。ヴェネツィアやボヘミアのガラス、デルフトの陶磁器などに使用された。19世紀にはまた、世界的なウラン採掘地域となった。
中世より鉱業はエルツ山地の経済と社会発展の原動力であり、800年以上も続く鉱業は、鉱山法、鉱物調査、精錬、管理と会計制度を発展させ、多くの技術革新を生み、他の欧州の鉱山の手本となった。
エルツ山地と観光
エルツ山地は木製玩具と民芸品、特にクリスマス飾りで知られている。くるみ割り人形、煙出し人形、鉱夫人形、天使の楽団、クリスマスピラミッド、キャンドル置きなど、興業はそれらのモチーフにもなっている。こうしたクリスマス玩具の村ザイフェンは、ドイツ最古のクリスマスマーケットが開催される州都ドレスデンの南65キロにあり、日本からの旅行者にとっては穴場的なスポットでもある。
また、クリスマス前の待降節には、ユネスコ世界無形文化財に登録されている「鉱夫のパレード」が行われる。1100人が行進するアナベルク・ブッフホルツのパレード(2019年12月22日)はエルツ山地最大。鉱夫パレードはザイフェン村(2019年12月14日)でも行われる
Welterbe Montanregion Erzgebirge e.V.
ウェブサイト |
---|
アウクスブルクの水管理システム
アウクスブルク市のこれまでの発展は、革新的な技術で水を管理し、活用し続けていることにある。特に13世紀以降に市が行った水管理は欧州の手本となった。
運河水路システム、15世紀から17世紀の給水塔とポンプ場、水冷利用の市食肉業、芸術価値の高い3つの大きな噴水、今も稼働する水力発電所など、22の物件から構成されている。人と社会が水の恩恵を受け、清潔な飲料水の重要性を伝える遺産である。
アウクスブルクの町に入ると、美しい噴水や給水塔、市街地を網目のようにめぐる水路、ヴェネツィアより多い大小530の橋を目にし、この町にとって水が特別な役割を持つことに気づく。アウクスブルクは2千年余り前にレッヒ川とヴェルトアッハ川の間に築かれた町で、1世紀にローマ人がこの2本の川の高低差を利用した。中世にレッヒ川に運河を作り、市内に物資を運搬。1416年に市は森の水を引いて飲料水とした。ローテス・トーア(赤門)の給水場は、ドイツで、恐らく中欧で最古となる。
その後、水車とピストンポンプで給水塔に水を揚げ、市内に供給。この揚水の技術は、ミュンヘンやブリュッセル、ウィーンなどの多くの都市に広まった。遅くとも1545年にはアウクスブルクは厳格に飲料水と雑用水を分け、この分野では最初の都市と言われている。
アウクスブルクと観光
イタリアのポー川岸のオスティーリア(もう一つ、アドリア海の街アルティヌムから出るルートもあり)からアウクスブルクへとヴィア・クラウディア・アウグスタ街道が通り、中世には交易街道としてにぎわったアウクスブルク。現在は、ロマンチック街道として知られている。
この町は、ルネッサンス期から近世にかけて世界で最も重要な貿易と金融の中心都市として繁栄し、豪商フッガー家は欧州の政治をも左右した。その時代の繁栄を映す名所旧跡(市庁舎、マキシミリアン通り、噴水、シェッツラー宮殿など)は、アウクスブルクを代表する観光スポットとなっている。
アウクスブルク観光局では、新たに世界遺産に登録された「水管理システム」についてのテーマ別ツアーを実施しており、今後はマキシミリアン通りのヘラクレスやアウグストゥス皇帝の噴水、旧市街を流れる小水路などを観光テーマに加えることができる。
Das Augsburger Wassermanagement-System
ウェブサイト |
---|