チロルの美味しい食卓
ドイツ、スイス、イタリアと国境を接するアルプスの帝都インスブルック。このインスブルックを州都とするチロルの料理はそうした地理的な条件に加え、ハプスブルク家の統治下にあった国々から伝わった料理とチロル独自の食文化が相まっているのが大きな特徴で、素朴な山の郷土料理からジビエといった季節の味覚、さらには宮廷料理まで楽しめる。
インスブルック市民の台所「マルクトハレ」
マルクトハルへ足を踏み込むと、色鮮やかな食材が目に飛び込んでくる。野菜や果物、ハーブなどの生鮮食品を扱う店舗はもちろん、ハムやソーセージなどの加工食品、パンやドライフルーツ、チーズなどの乳製品、スパイス、ワインやハチミツ店など小さな店舗が所せましと軒を連ねている。こうした店が、曜日や時間帯によって入れ替わるというのも面白い特徴。さらに市場の奥には、狭いながらもイートイン・スペースが設けられている。
だが、筆者がこの市場で最も驚いたのは、充実した鮮魚コーナーだ。ヨーロッパヘダイ、アルゼンチンアカエビ、アルプスイワナ、カジキ、オヒョウ、サバ、アンコウ、さらにカニやイカ、タコまである。もちろん、日本と比較すれば種類が極端に多いわけではなく、また値段も割高ではあるが、海のない国でこれだけ新鮮な魚介類が外国人の多いレストランではなく、庶民が買い物に訪れる市場に揃っているというのは、やはりスゴイことだと思う。
その背景には、欧州域内での流通が活発になったことが挙げられるが、川が流れるチロルではレモンをかけて頂くマスのグリル料理「フォレレ・ミューラリン(Forelle Mullerin)」なども、伝統的な郷土料理として存在する。こうしたことからも、チロルでは古くから豊かな食文化が育まれていたことがうかがい知れる。
Markthalle Innsbruck |
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味わい豊なチロルの郷土料理
チロルを代表する食品と言えば、やはりチーズやソーセージ、さらにハムなど保存のきく酪農製品や加工食品。また、春から初夏にかけてはホワイトアスパラガス、さらに秋から冬にかけては鹿やイノシシ、さらにウサギなどの猟獣肉を使ったジビエ料理も楽しめる。キノコなど日本人に馴染み深い食材も良く食されていて親しみが湧く。味は全体的に少し濃いめで、どれもボリュームは抜群だ。
そうしたチロルの伝統的な食事を楽しむなら、やはり足を運んでみたいのがケラーなどの大衆的なお店。今回は、中央駅にも程近い「Tiroler Bauernkeller」というお店に行ってみた。
「クヌーデル」と呼ばれる練り団子が浮き実として入っている「チローラー・クヌェーデルズッペ(Tiroler Knoedelsuppe)」、小麦団子入りのコンソメ「グリースノッケルズッペ(Griessnockerlsuppe)」、ホウレンソウやトマトソースを詰めたパスタに溶かしバターをかけた「チロル風ラビオリ(Schlutzkrapfen)」は絶品。当然のことながら、「シュニッツェル(Schnitzel)」といったオーストリア各地で味わえる定番料理も提供されている。
また、イタリアのブルーチーズ「ゴルゴンゾーラ」を使ったクリームスープ(Gorgonzola Suppe)はボリュームも満点で、チーズ好きには堪らないクセになる味わい。もしメニューで見つけたら、味わっておきたいオススメの一品である。
Tiroler Bauernkeller | http://www.erlebnisgastro.at/index.php/ |
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もう一つ、市街地の中心部にも伝統的な頂けるお店がある。それが温もりを感じさせるチロル風の内装がかわいらしい「Gasthof Weißes Rössl」というお店。マルクトハレから徒歩で5分ほどの Kiebachgasse という細い通りにある。
ここで頂いたのは、「チロル風肉じゃが(Tiroler grostl)」や、秋から冬にかけて食される「栗のスープ(Maronensuppe)」。前者の「チロル風肉じゃが」は、牛肉や豚肉をジャガイモやタマネギ、ハーブに混ぜて炒めた代表的な一皿で、チロルの定番家庭料理でもある。
一方、後者の「栗のスープ」は、丁寧に渋皮を処理した栗を裏ごしした非常に手間ひまのかかる料理であることから、なかなか家庭で作るのも大変そうだが、ほのかな栗の甘みが感じられ、高得点な味わいである。
その他にも、浮き実としではない小麦粉やミルクなどで作ったチロル風団子「チローラー・クネーデル(Tiroler Knoedel)」や、にんにくが効いた豚肉の煮込み料理「ハウス・プファンデル(Hauspfandl)」も、チロルへ行ったら味わっておきたい味覚となっている。
Gasthof Weißes Rössl |
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