香港ワンダー・コラム
香港の現在の国際空港はカイタック(啓徳)空港だが(【註】1998年の8月頃からランタオ島の北部のチェクラップコック(赤立角)に新しい国際空港がオープンする)、その近くに「九竜城」と呼ばれていた怖い場所があった。
そこに建っていた多くの古い高層ビルは、その大部分が違法建築であったのは勿論、ビルとビルをつなぐ狭い歩廊や地下工場、それらを結ぶ地下道などが迷路のように入り組んでいて、犯罪者などがそこに逃げ込んだらまず捕まらず、麻薬、売春、贋物作り、不法入国など、あらゆる犯罪の巣窟で、全くの無法地帯だったのである。いわば、香港の悪いイメージを形として具現化した香港の恥部だったといえる。
それが香港の中国返還を前にスッカリ姿を消した。すべての建築物がきれいに撤去されて、1995年の12月22日に「九竜城公園」としてデビューしたのである。清朝時代にはこの場所に官庁があったことから、中央に当時の官庁を模した建物が建てられ、その周囲は清朝初期のスタイルで造園されている。そこには歴史を知る上でも興味深い石碑や彫刻なども配されていて、当時の雰囲気を楽しむことができる。
あの「九竜城」を遠くからでも望見したことのある人にとっては、まさに晴天の霹靂であろう。あの忌まわしい魔窟はもう過去のモノとなっている。