香港ワンダー・コラム
香港にはビクトリア女王の「ビクトリア」という名前を冠した有名な場所がある。
ビクトリア・ピーク、ビクトリア・ハーバー、ビクトリア公園など、それにクイーンズ・ロード(皇后大道)、クイーンズ・ピアー(皇后碼頭)やキングス・ロード(英皇道)などもある。ショッピングでお馴染みのネーザン・ロード(彌敦道)も、なんと総督の名前をとったものである。
英国名残りの名称は無数にあるが、中国への返還後、これらは耳新しい中国名に変えられるのだろう。中国のメンツを考えればこれも致し方がないが、短兵急にやられると必ず大混乱が起きる。時間をかけてゆっくりやってもらいたいところである。
香港観光協会は自ら『競馬観戦ツアー』を催行している。9月ー6月の競馬開催日だけだが、そのハイライトは、極めて格式の高い「ロイヤル香港ジョッキー・クラブ」のビジター・ボックスでの食事付きの観戦である。
返還後も「競馬」は認められるらしいので、このツアーも引き続き多くの観光客を楽しませることは間違いない。ただ、ジョッキー・クラブの「ロイヤル」の名称だけは消えることだろう。「ロイヤル香港ヨット・クラブ」も同じである。「ロイヤル」には『英国王室に奉仕する』という意味合いがこめられているから、中国としても我慢できなかろう。
新界のファンリン(粉嶺)にある、かの有名な「ロイヤル香港ゴルフ・クラブ」(RHKGC)の名前からからも、長年なじんできた「ロイヤル」は消される。寂しい限りである。何年も前に私がそこのプロ・ショップで購入した、ブルー地に赤で縁取りされたROYAL HONG KONG GOLF CLUBの古びたワッペンが、私には大変貴重なものに見えてきた。
香港に残された英国の植民地時代の影響を抹消しようとすることは理解できるが、国際都市香港の公式の場での「英語」に制限を加えたり、追放したりしたら、これはもう香港の死命を制する大問題となる。
中国外務省の発表(96/7/2)によれば今年の9月から定例記者会見は英語を一切使わず、中国語一本に絞るらしい(毎日新聞 96/7/3)。香港では今まで公文書や一般ビジネスで英語が中国語をおさえ大いに幅をきかせていたが、最近英語の影が次第に薄れてきていることを思うにつけ、香港が万一この決定に追従したりしたら、こんな予期しないところから始まる中国化の浸透が気にかかる。