香港ワンダー・コラム
香港島と九竜側とを隔てるビクトリア・ハーバーの幅は両岸の埋め立てにより昔に比べるとかなり狭くなっている。
私が初めて香港を訪れた1967年頃は、香港島セントラル(中環)にある、かの有名な『マンダリン・オリエンタル・ホテル』のすぐ前の道路(コンノート・ロード・セントラル)の反対側はハーバーの波に洗われていた。そこに浮かぶ無数のサンパンが不思議な活気を漲らせ、今のセントラルとはまるで違った香港らしさを見せてくれていたのである。
現在、フェリーで九竜側から香港島に渡ると、すぐ目の前に『ジャーデイン・ハウス』(怡和大厦)や『エクスチェンジ・スクエヤー』(交易広場)などの高層ビルがそそり立っている。それらは皆埋め立て地に建てられたものなのである。
セントラル付近に群がっていたサンパンや水上生活者達は香港島の反対側のアバディーンに移されたという。同様に、ワンチャイ(湾仔)からコーズウエイベイ(銅羅湾)にかけて、グロセスター・ロード(告士打道)のハーバー側も埋め立てられ、広大な土地が造成された。
そこには中国返還後もひきつづき国際会議やコンベンション、それに大規模展示会を香港に誘致するための立て役者、『香港コンベンション&エキジビション・センター』(HKCEC□□香港会議展覧中心)がある。
その他、『セントラル・プラザ』、『香港アート・センター』(香港芸術中心)を始めとして多くのビルが立ち並び、その辺一体は新開地というよりも、すでに観光客にも見慣れた香港の顔になっている。
特に『香港コンベンション&エキジビション・センター』では、現在さらに6ヘクタールを埋め立てる第2期拡張工事が行われている。完成は中国返還の年の1997年の予定である。
九竜側も同様で、あの『ペニンスラ・ホテル』のあるソールズベリー・ロード(梳利士巴利道)のハーバー側、つまり、現在、『香港スペース・ミュージアム』や『香港美術館』、『ニューワールド・センター』、それに『リージェント・ホテル』などが建っている一帯は埋め立て造成地なのである。
『リージェント・ホテル』から延々と海底トンネルの入口近くまで延びるハーバー沿いの遊歩道、『チムサアチョイ・イースト海浜花園プロムナード』もハーバー側にせり出して造られたものである。夜遅くまでアベックで賑わい、ロマンチックな香港島の夜景を見ながら恋を語るランデブーのメッカとなっている。
さて、現在、ランタオ島の北のチェクラップコックに新空港が建設中である。1998年4月に開港される予定である。延びて8月になるという説もあるが、開港の正確な時期はさておき、この新空港建設は、実は香港の『港湾・空港開発戦略』(PORT AND AIRPORT DEVELOPMENT STRATEGY〈PADS〉)の一環なのだ。
この “PADS”は、将来の、香港のみにとどまらず、香港-マカオ-広州を結ぶ中国珠江デルタ地域を包含する広東省、さらには華南一帯の経済・貿易面の飛躍的な発展を見越し、香港の空、海のハブ港としての機能を高めるため、とりあえず2011年のニーズに十分対応できるよう空港、港湾の施設を大々的に拡張しようという、世界最大規模の長期インフラ整備計画なのである。