3.ビザンツ時代の面影を求めて
ビザンツ帝国最後の砦「ミストラ遺跡」
ギリシャというと古代遺跡を主軸とした観光に偏りがちだが、実はビザンツ帝国(東ローマ帝国)の支配下にあった時代の遺跡や、その時代の面影を今に伝える町並みも少なくない。そこで今回は、そのビザンツをテーマにした旅のスポットをご紹介することにしよう。
ペロポネソス半島の南東部、ラコニア県にある世界遺産(1989年登録)の「ミストラスの考古遺跡」(通称、ミストラ遺跡)は、スパルタからおよそ6キロ、タイエトスの山中に築かれたビザンツ時代後期の城塞都市である。
風の吹く音しかしない静寂な山の斜面に城塞や教会、修道院が憂いを帯びた表情で、その確かな存在を主張するかのように鎮座し、かつての華やぎや、「最後の砦」として悠久たる時の流れの中に消えていった帝国や城塞都市の運命の物語を、そっと囁きかけてくるような遺跡である。
ミストラが歴史の舞台に登場するのは十字軍に侵略されたラテン帝国時代、ペロポネソス半島を統一した第4代アカイア公ギヨーム2世によって城が築かれた13世紀初頭のことだ。その後、ビザンツ帝国との戦いに敗れ割譲されたが、その後も半島の重要な拠点と位置づけられ発展を続け、14世紀から15世紀にかけて最盛期を迎えた。
そんな中で育まれたのが「パレオロゴス朝ルネサンス」だ。これはビザンツ帝国時代における最後の古典復興で、その時代ミストラとコンスタンティノポリス(現在のイスタンブール)を中心に、優美で写実的な壁画がたくさん描かれた。ミストラ遺跡にあるアヤソフィアをはじめ、唯一現役のパンタナッサ(女子)修道院に、そうした時代の名残を目にすることができる。
ミストラはその後、オスマン帝国やヴェネツィア統治時代を経て、1770年のアルバニア侵攻によって陥落。これによりおよそ500年にわたる城塞都市としての歴史に終止符が打たれ、「幻の都」として時の流れの中に吸い込まれていったのであった。
遺跡の出入口があるのは、麓と山の中腹の2ヶ所。麓から入場して斜面を上りながら、もしくは中腹から入り山道を下りながらハイキング感覚で、ビザンツをはじめとする城塞都市の歴史と心静かに対話ができる貴重な遺跡でもある。中腹の入口から少し離れた場所からは、山の斜面に広がるミストラ遺跡の全景と、その背後にスパルタの町が一望できる。
■ ミストラのお勧めホテル
ホテル・ビザンティオン ☆☆☆
ミストラ遺跡やタイエトス山を望む、古代都市「ミストラ遺跡」近くの村にあるこじんまりとした3ッ星ホテル。客室にエアコン、ドライヤー、衛星テレビ完備。共用部分(一部客室)で、Wi-Fiが無料で利用できる。入口に数段の階段があるが、館内はエレベーターの設置あり。数は少ないが、ホテルの付近にカフェやレストランも営業している。等級はそれほど高くないが、アットホームな温もりが感じられるホテルである。
Byzantion Hotel/Ξενοδοχεία Byzantio
客室数 | 全26室 |
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住所 | Mystras-Lakonia |
ウェブサイト |
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