01. 世界遺産ブダペスト街歩き

掲載日 : 2016年05月10日

写真 : 筆者撮影

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Palace-and-Bridge-1

一枚絵のように美しい闇夜に浮かぶくさり橋と王宮



「ドナウの真珠」と謳われるブダペストは、いつ見てもその美しさにため息がこぼれる。
中でもドナウ川に架かるくさり橋と、その袂から眺める闇夜に浮かぶ王宮は、まるで一枚絵のように美しい。

この風景との再会を、一体いくつの夜、夢に見続けたことだろう。
最後にブダペストを訪れたのは、2009年のクリスマス・シーズン。いつの間にか、6年もの歳月が過ぎていた。
ブダペストを発つ日、最後にもう一度この絶景を目に焼き付けておこうと同じ場所に立ち、ドナウの水面を撫でた冷たい風に吹かれながら、宝石のような輝きを放つくさり橋と王宮に釘付けになった。

刻々と迫る列車の出発時刻。時折、握っていた携帯で時間を確認しながら「あと5分… それが無理なら、せめてあと30秒だけでも…」と”時の女神”にすがるような思いで、1分1秒の別れを切ないまでに惜しんだことを、今でもハッキリと覚えている。

馬の手綱を引くマジャール人

王宮の中庭にある
「馬の手綱を引くマジャール人」の像

この国が社会主義体制を脱ぎ捨ててから早26年。久しぶりに見るブダペストは、以前よりも装いが軽くなり、より洗練された印象だ。コンテンポラリーなアートやグルメに彩られるこの街が今、「第2のベルリン」と呼ばれているのも頷ける。

そして、しばらく止まっていた私の至極のハンガリー時間が、この場所から再び動き始めようとしている。


恋い焦がれた世界遺産の街を歩く

恋い焦がれたブダペスト。昔と変わらない気品を放ち、私を虜にするのが、1989年に世界遺産に登録された王宮を中心とする「ブダ王宮地区」だ。

ここだけは何も変わらない。古く美しい街並みが広がっている。あえて変わった点を挙げれば、2014年に建築家イブル・ミクローシュの生誕200周年を記念して「王宮バザール」がリニューアルされ、完全バリアフリー化が実現。くさり橋(Lánchíd)通りから中庭までのエレベーターに加え、そこから王宮までの斜面に長いエスカレーターも完成し、観光客の足として親しまれているクラーク・アダム広場からのフニクラの出番が、少し減ったことくらいだろうか。

そうしたブダ地区を象徴する「王宮」が、黄金期を迎えたのは15世紀のマーチャーシュ王の時代。16世紀になるとオスマン帝国に占領され、1686年にハプスブルクが奪還するまでその支配は続いた。
王宮が現在のようなバロック様式になったのは、18世紀中頃のこと。中庭には、ハンガリー民族のルーツが騎馬民族だったを表す「馬の手綱を引くマジャール人」の像が立っている。

王宮の内部には現在、「ブダペスト歴史博物館」と「ハンガリー国立美術館」、それに「セーチェニ国立図書館」がある。王宮ではまた、毎年8月に行われる「民芸祭」をはじめ、「国際ワインフェスティバル」や「パーリンカ祭り」などのイベントも行われ、観光客だけでなく市民の憩いの場ともなっている。

王宮の地下部分には、地中にあった洞窟を結んだ「迷宮」(王宮バザール)が広がっている。ここはかつて、防空壕や軍事施設として使われていたが、現在はシャーマニズムなどに関する展示品を収蔵する博物館の他、イベントスペースとしても活用されている。ここは夜になると照明がすべて消され、ランプ片手に観覧するというユニークな体験もできるそうだ。

聖イシュトヴァーンの騎馬像

マーチャーシュ教会の前にある
漁夫の砦と聖イシュトヴァーン像

王宮の門を出て少し歩くと、その先に13世紀創建の「マーチャーシュ教会」が見えてくる。ブダがオスマン帝国に占領された16世紀、その内部はモスク風に改造されたが、19世紀末になって現在見られるネオゴシック様式の姿になった。

色鮮やかなジョルナイの屋根が目を引くこの教会では、歴代ハンガリー王の戴冠式や結婚式が執り行われてきたが、特にハプスブルクの皇帝フランツ・ヨーゼフと皇妃エリザベート(以下、シシィ)が、ハンガリー帝国の君主として戴冠した場所として有名である。

2人の戴冠式に際しては、リストが『戴冠のミサ』を作曲して、自ら指揮。その戴冠式の衣装を纏ったシシィの肖像画は有名で、その肖像画やドレス(レプリカ)は、ウィーンのホーフブルク宮殿に展示されている。

余談ではあるが、1898年9月10日にジュネーブで暗殺されたシシィが、その時に身につけていたとされるドレスが「ハンガリー国立博物館」に展示されていて、こちらもシシィのファンにとって見逃せないスポットの一つとなっている。


警戒すべき敵はまさかの強風?! 砦の中の絶景カフェテラス

マーチャーシュ教会の向かい立っているのが、初代国王イシュトヴァーンの騎馬像。その背後の白い要塞が、19世紀にシュレク・フリジェシュによって設計された「漁夫の砦」である。当初は要塞として建てられたが、防御に使われたことは過去に一度もなかったという。

砦にある7つの尖塔は、この地へやって来たマジャール人が、7つの部族で構成されていたことに由来している。ネーミングについては諸説あるようだが、「この周辺に漁師が多く住んでいたため」との説明を受けた。
 


壮麗なネオゴシック様式のマーチャーシュ教会   マーチャーシュ教会と漁夫の砦

左:壮麗なネオゴシック様式のマーチャーシュ教会
右:尖塔のカフェテラスから見た「マーチャーシュ教会」と「漁夫の砦」

 


マーチャーシュ教会を背にした砦の一番左の尖塔の中に、まるで秘密基地のようなカフェがある。小さなテラスがついたこの場所は、ドナウ川や対岸の国会議事堂、その先に広がるペスト地区を一望する絶景スポット。悪天候の日には時折、強い風が吹き付けることもあるが、特に刻々と表情を変える夕暮れ時の眺めは格別である。カフェのすぐ下には、同じ系列のレストラン(Halászbástya Étterem)が営業している。

8月20日の建国記念日(聖イシュトヴァーンの日)には、毎年ハンガリーの各地で様々なイベントが催されるが、ブダペストでもドナウ川の上空で「飛行機パレード」をはじめ、聖イシュトヴァーン大聖堂の「聖遺物パレード」などが行われる。そして、最後はこの場所からも見える「くさり橋」周辺で花火が打ち上げられ、華やかに幕を閉じる。

ブダペスト滞在中、エリザベート橋を車で渡っている時に、偶然ドナウ上空に打ち上げられた花火を目にした。
特に祝日ではなく、現地の人もその理由が分からなかったようだが、それはまさに悶絶寸前の美しさ。建国記念日の夜にはドナウ川で、この花火の鑑賞を目的としたクルーズ船が特別運航されるので、この日にブダペストに滞在する予定なら、早めのチェックと予約がお勧めだ。
 


イメージ動画 (配信元:Leskovicsfire/YouTube)


 

レストラン「漁夫の砦」
Halászbástya Étterem

http://www.eng.halaszbastya.eu

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