17. トカイワイン紀行 ≪前編≫

掲載日 : 2016年08月15日

写真 : 筆者撮影

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ディスノークー

ブドウ畑が一面に広がるトカイの田園風景(ディスノークーにて撮影)


〈豚の石〉という名のワイナリー「ディスノークー」

視界いっぱいにブドウ畑が広がるトカイの原風景。トカイ地方には全体で約600のブドウ農園があるが、外国資本の農園も少なくない。トカイ村から車で約15分、かつてラーコーツィ家が所有していた「ディスノークー」も、そんな外国資本のワイナリーの一つである。

ディスノークー

トカイの名園「ディスノークー」

ここは1743年にハンガリー王室から「特級ブドウ畑」に指定された名園で、現在は仏メドック地区ポイヤックの「シャトー・ピション・ロングヴィル・バロン」(格付け:メドック2級)など、フランス国内外に複数のシャトーを持つ仏系保険会社のアクサ・ミレジム(AXA Millesime)が所有している。

この「ディスノークー」のように、トカイのブドウ園に外国資本が相次いで入ってきたのは、ハンガリー民主後の1991年から1993年にかけてのこと。そうした外国の企業がトカイの由緒あるブドウ園を買い取り、ワイナリーを次々と再建した。
だが現在は、土地の買い付けシステムが個人優先となっていて、外国企業はおろか、ハンガリーの資本であっても、なかなか認可が下りなくなっているのだという。

名称でもある「Disznókő」とは、ハンガリー語で〈豚の石〉という意味で、ブドウ畑の中腹にあるベルベデーレ(見晴台)横に昔から置かれた大きな石が、どことなく〈豚の頭〉を連想させることに由来しているのだという。

ここではブドウ畑の中を歩かせてもらい、実際に足裏で土壌の感触を確かめてみた。貴腐ワイン(トカイアスー)の産地として、世界的にも有名なトカイ・ヘジャイヤ地域は、火山性土壌が主体。この畑も表面は、水分を含んだ柔らかな粘土質の土や黄土に覆われ、小さな石がコロコロとしている。

ボルロフ川

トカイを流れるボドログとティサ川の合流地点

一説によるとその昔、ブドウ畑を耕す農夫が、クワに地中の石があたる度に、「この豚!」と叫んでいたことも、このブドウ園が〈豚の石〉と呼ばれる一つの所以だという。

トカイ・ヘジャイヤ地域で栽培が公認されているブドウ品種は5つあるが、その多くを占めるのが〈フルミント〉という品種で、そうしたブドウから貴腐ワインを含む、数々の上質なテロワールワインが生産されている。

中でも貴腐ワインを造る上で、欠かせないのが〈ボトリティス〉と呼ばれる貴腐菌だが、これはトカイの谷間を流れるボドログとティサの2本の川から立ち上る霧が貴腐ブドウの生育に欠かせない水分を運び、ボトリティス菌の活動を促進するという、トカイ特有の気候から生み出されている。

「ディスノークー」は琥珀色に輝く、より糖度の高い(5~6プットニョス、エッセンシア)上質な貴腐ワインの造り手として知られているが、遅摘みのサモロドニやフルミントのドライもかなりイケるので、トカイを訪れたらぜひ味わってみて頂きたい。

トカイ屈指の規模を誇るこのワイナリーでは、地下セラーでのテイスティングを提供している他、直営ショップやレストランも併設されている。
 


Disznoko_4  ディスノークーのアスー

左:農園名の由来にもなった〈豚の頭〉の形をした石
右:琥珀色をしたディスノークーの貴腐ワイン(アスー)



ディスノークー・ピンツェ
Disznókő Pincészet

http://disznoko.hu

 

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