11. ハンガリー人の故郷を歩く

掲載日 : 2016年07月04日

写真 : 筆者撮影

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ホッロークー

1987年に世界遺産に登録された村「ホッロークー」の中心部



世界遺産の村「ホッロークー」

ブダペストの北東およそ70キロの山岳地帯に、まるで時の流れが止まってしまったかのような静かな村がある。ここは1987年に村単位として初めて世界文化遺産に登録された「ホッロークー」。この「ホッロー=カラス」「クー=石」というちょっと変わった村の名は、村のシンボルにもなっているチェルハートの山頂に建つ13世紀建造の城の主が女の子を誘拐して幽閉したところ、カラスに化けた悪魔が毎晩少しずつ石を取り除き助け出した、という伝説に由来していると言われている。

ホッロークー

煙突の代わりに壁に開けられた排気口

この村で暮らすのは、その昔モンゴルの襲来から逃れてこの地へとやって来たトルコ系の末裔民族パローツ人。先述の「城」以外にも、文化保護財に指定された58軒の「古民家」、塔の部分だけ木造でできた14世紀建造の「教会」、村の歴史を紹介する「民俗博物館」や「人形博物館」などがある。まさに〈生きた博物館〉のような村である。

2011年に導入された、砂糖や塩分の多い飲食品に課税する通称「ポテトチップス税」など、ユニークな税金のあるハンガリー。そんなハンガリーには、15世紀のマーチャーシュ王の時代にも、ちょっと変わった課税方法があった。それが「煙突の数」。このホッロークーには、その名残を今に伝える伝統家屋が見られる。

村を歩いていると時折、少し目線を上げた屋根裏部分の壁に穴の開けられた家屋がある。これは税金対策のために開けられた穴。この穴が煙突代わりを果たしているのだが、単純な穴ではなく十字架やワイングラスをイメージした模様になっている辺りが、どこか日本の伝統家屋に見られる〈欄間〉を連想させる。
 


ホッロークー  ホッロークー

左:高齢化が加速する村にある幼稚園
右:ヨーロッパでは珍しい土と木材で建てられた家屋



村の人口はおよそ340人。うち4分の3が年金生活者と高齢化が進むホッロークー。夏には多くの観光客で賑わうこの村もオフシーズンは人気もまばらで、静かにのんびりと散策が楽しめる。とは言え、お店はどこもクローズ。そんな中、私たちの存在に気付いてドアを開けてくれたのが、「ファゼカシュハーズ」という店であった。


Fazekasház

ハンドメイドの陶器が並ぶ店内

ここはブダペストから移り住んだ陶芸家レージ・ラースローさんが、自ら手作りした陶器を中心に扱うローカル色の濃い土産店。店では予約制となるが〈陶芸〉や〈ジンジャーブレッドの飾りつけ〉といったワークショップも行っているという。ホッロークーでは、こうした住民らとの交流も重要なアトラクションとなる。

店内を見せてもらっている間、ラースローさんがこの地方の伝統的な音楽をかけてくれた。次から次へと展開する変拍子のリズムが、どことなくトルコの音楽を連想させる。そうしたハンガリー固有のメロディーをホッロークーのような原風景の中で聴くと、より情緒的に感じられる。

ホッロークー名物と言えば、インゲン豆と羊肉を使った〈パローツスープ〉。その他にも酸味の効いたパローツの料理があるので、そちらもぜひ味わっておきたいご当地グルメである。また、イースターなどのお祭りの日には、美しい刺繍が施された民族衣装のブラウスと、何枚ものスカートを重ね着した女性たちの姿が見られる。既婚者はさらに頭に飾りを着け、男性は黒い帽子をかぶるのが特徴となっているそうだ。

ここには他のハンガリーの町や村では感じられない、ある種の特別な時間と空気が流れている。個人旅行者には少々足の不便があるが、〈訪れるべき村〉の一つと言えるだろう。
 


Fazekasház  Fazekasház

左:ブダペストから家族を連れ移り住んだ陶芸家で、土産店の主のラースローさん
右:おとぎ話に登場しそうな陶器の置物も販売されている



ファゼカシュハーズ
Fazekasház

http://www.holloko-fazekashaz.hu

次回は「ラベンダーが香るバラトン湖へ



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