05. ブダペストを食べつくす! 〈ブダ編〉
空前の美食ブームに沸くヨーロッパ。そのブームを牽引した代表的な人物にカリスマシェフ、フェラン・アドリアなどの存在が挙げられるが、その他にもインターネットの普及や欧州連合(以下、EU)の存在など、考えられる要因は様々である。
中でも鍵になっていると思われるが「EU」。EUの発足により域内での人や文化、物品の流れが活発になり、それまで高価だったり、その土地にあまり馴染みのなかった珍しい食材も、まるで国産のように簡単に入手できるようになった。さらに情報のスピード化に伴い新しい調理法なども瞬く間に広がり、それが料理人たちの感性を刺激。シェンゲン協定により、国外のお店での修行も以前よりずっと楽にできるようになった、というのもあるだろう。
その結果、これまで美食とは無縁に近かった国々の食文化が大きく変化する一方、古くから豊かな食文化を育んできた国々でも、より洗練されたガストロノミーへと変貌を遂げつつある。まさに今〈第2のベルリン〉と呼ばれるブダペストもその真っ只中にあり、街はコンテンポラリーなグルメで溢れている。
ハンガリーの今年のテーマは「食の冒険」。そこで、まずは首都ブダペストの最新ガストロノミー事情を、注目のレストランの情報と合わせてご紹介することにしよう!
礎は13世紀のパン工房!ブダ地区の人気カフェレストラン「ピエロ」
「カフェ・ピエロ・レストラン」(Café Pierrot Étterem)は、1982年にオープンしたブダペスト初のプライベート・カフェレストラン。2005年から毎年ミシュランガイドに掲載され、さらに2011年にはミシュランに次ぐ権威あるレストランガイド「ゴー・ミヨ」(Gault Millau)で2ハットを獲得するなど、その味やサービスにおいても定評がある。
これまでロバート・デニーロをはじめ、ロジャー・ムーアやジェレミー・アイアンズ、そしてマルチェロ・マストロヤンニ、アントニオ・バンデラスといった世界的に名の通った映画俳優や、デペッシュ・モード、AC/DCなどのアーティストをもてなしてきた有名店で、静かにピアノが流れる落ち着いた店内にはそうした著名人たちの写真と共に、店名にもなっている〈ピエロ〉をモチーフにした絵が飾られている。
バケットにナイフを入れる「ザクッ、ザクッ」という音と共に、店の奥でふんわりと漂う香ばしいパンの匂いが、かつてこの場所がベーカリーだったという13世紀当時を彷彿とさせる。この歴史ある建物は現在、重要文化財に指定されている。
歴史とモダンが見事に調和した店内で供されるのは、現代風にアレンジされたオーストリア・ハンガリー二重帝国時代の料理。陶磁器は「フッチェンロイター」、グラスは「シュピゲラウ」、シルバーは「WMF」と、いずれもシシィの生まれ故郷である南ドイツゆかりのブランドが使われている辺りが、ちょっと心憎いような感じがするのは筆者だけであろうか…
さて、この日のメニューはカップで供されたパプリカの効いた〈グヤーシュ〉からスタートし、見た目にも美しいメインディッシュ〈カモ胸肉のロースト パンプキンピューレ、パルメザン・ロワイヤル&ザクロ添え〉、そしてデザートの〈パンナコッタのマンゴー添え〉へと、流れるように続く3コース。
モダンなグヤーシュの味わいもさることながら、特筆すべきは絶妙なカモ肉の焼き加減。パルメザンチーズも単に削ったり、ソースにするのではなく、あえてロワイヤルにする辺りにも料理人のこだわりが感じられ、さり気なく添えられたザクロからはハンガリーの地域性や歴史が伝わってくる。彩り豊に美しく盛りつけられた1皿に様々な要素が散りばめられた、まさにハンガリーならではのガストロノミーである。
カフェ・ピエロ・レストラン |
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