10. ルネッサンスが花開いた王都ヴィシェグラード
ヴィシェグラードは、1991年にチェコスロヴァキア(当時)とハンガリー、ポーランドの3ヶ国が、友好と協力を進めることを目的に首脳会議を開いて、中欧ヨーロッパの地域協力機構「ヴィシェグラード・グループ」が組織された町。この首脳会議の開催地がこの町に選ばれたのは、1335年にこの町でハンガリー王カーロイ・ロベルト(カーロイ1世)と、ポーランド王のカジミェシュ3世、そしてボヘミア王のヨハンの話し合いが行われたことに由来している。
深い眠りから覚めた伝説の城「マーチャーシュ王宮」
砦は13世紀の蒙古襲来を期にベーラ4世によって再建され、王の一族にとって重要な避難場所となった。その後、15世紀のマーチャーシュ王の時代に増強。後のオスマン帝国の攻撃にも耐えた、難攻不落の砦である。
そんな砦とは裏腹に、丘の麓にかつて〈地上の楽園〉と称えらえた14世紀建造の宮殿がある。これは、ハンガリー王となったカーロイ1世が、イタリア出身であったことを理由にブダ入城が果たせなかったために築かれた王宮。15世紀に深い教養を身につけた文化人であったマーチャーシュ王が、イタリアから嫁いできた王妃のために芸術家を呼び寄せて、優美なルネッサンス様式の夏の離宮に改築したことから「マーチャーシュ王宮」と呼ばれている。
そうした王宮は16世紀にオスマン帝国の来襲により破壊され、その時に埋もれて存在が分からなったことから、長年〈幻の城〉と言われていた。だが、20世紀になってワインセラーを造ろうとした農夫により偶然発見。現在もハンガリー政府による調査と、発掘が進められている。この王宮が一見、廃墟にも見えるのはそのためである。
地道な調査の結果、王宮から「ライオンの泉」や「ヘラクレスの噴水」といった貴重な遺物が発見された。建物の一部が修復され、現在は「王宮博物館」として一般に公開されている。
建物の1階部分には、大理石でできた「ヘラクレスの噴水」のあるルネッサンス様式の中庭、発掘品と共に王宮の歴史を紹介する展示室や、神聖ローマ皇帝ジギスムント時代の部屋が、2階部分にはキッチンをはじめ、王の寝室や食堂、執務室など、当時の様子が垣間見られるように再現されている。
夢中になって宮殿内を見ているうちに、あっという間に陽が沈み、長い眠りから覚めた主のいない宮殿に灯りがともった。その途端、時の迷宮に迷い込んだかのような、不思議な空気が王宮全体を包み込む。そっ~と、どこから誰かに見られているような気がして、一瞬ゾクゾクっとしたのは筆者だけの体験であろうか…?
マーチャーシュ王宮博物館 |
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