12. ラベンダーが香るバラトン湖へ

バラトン湖随一の景勝地、ティハニ

ブダペストの南西およそ130キロ。ハンガリー西部に位置するバラトン湖は、東西に細長く伸びる中央ヨーロッパ最大の湖だ。〈ハンガリーの海〉と呼ばれるこの湖の幅は、最長で約79キロ。湖畔には深さ2～4メートルの浅瀬が広がり、ハンガリー語で〈シュトランド〉言われるビーチが点在している。夏になると、隣国からも大勢の人が集まる人気の避暑地でもある。

バラトン湖の大きな特徴は、他所ではあまり見られないミルクを溶いたような淡いコバルトブルーをした水面。高台から湖を眺めたある詩人は、その美しさを『私の目の前に天使が舞い降りた』と描写した。

湖の周辺は、平坦で肥沃な大地が広がる湖の南側に反して、北側は小高い丘が続いている。そこから湖に向かって緩やかに広がる斜面で時折、馬がのんびりと草を食むハンガリーらしい牧歌的な風景も見られる。そんなバラトン湖随一の景勝地が、湖に突き出した半島東部の村ティハニである。

ティハニのシンボルは、第4代ハンガリー国王のアンドラーシ1世が1055年に創建した、ベネディクト修道士会の修道院を土台に、18世紀に再建されたバロック様式の修道院付属教会。その歴史の中で幾度となく建て替えられたが、アンドラーシ1世が眠る地下部分は創建当時のまま残されている。

この修道院には珍しい古文書がある。これは文字として残る最古のハンガリー語で、修道院の創立について記されている。だが、この修道院にあるのは残念ながら複写。オリジナルは、世界遺産「パンノンハルマ修道院」に保管されている。

この修道院教会の前に、別棟でビジターセンターがある。ここでは修道院の歴史を紹介するフィルムが上映されている他、ティハニの特産品も揃うショップが併設されている。ここで販売されているハチミツは、かなりお買い得なので、お土産にお一ついかがだろうか。
 

女子心に火をつけるラベンダーショップ

修道院教会の周辺に、かつて漁夫が住んでいたというティハニ。村の目抜き通り沿いに並ぶ、まるで絵本に出てきそうな可愛らしい藁ぶき屋根のコテージが、どことなくコッツウォルズ（英国）を彷彿とさせ女子心をくすぐる。

そうした建物の一部は、ショップやカフェとして営業している。中にはティハニのオリジナル手作り陶器を直売するショップや、マジパンのミュージアム＆ショップもある。だが、このティハニで最も女子心に火をつけるのは、ラベンダー製品かも知れない。

周辺の丘陵地帯にラベンダー畑が広がるティハニは、ハンガリー有数のラベンダーの名産地。初夏にラベンダーが咲き始めると、風にのって漂うフレッシュなラベンダーの香りにつつまれる。
毎年6月には「ラベンダーフェスティバル」も開催されている。このシーズンには、ラベンダー目当てに各地から観光客がやって来て、ラベンダー摘みを楽しんだりするという。

時間に余裕があれば「ラベンダーハウス・ビジターセンター」を訪れたり、初夏ならラベンダー園へ出かけてみるのもお勧めだが、石鹸やローション、アロマオイル、お茶など、たくさんのラベンダー製品は、村にあるショップでも売られている。

中でもラベンダーグッズが所せましと並ぶ「ティハニ・ラベンダー・マニュファクトリー」（Tihanyi Levendula Manufaktúra）の直営店は一押し！この店は村の中心部、バッチャーニ通り（Batthyány u.18）とコシュート・ラヨシュ通り（Kossuth L.u.41）に2店舗ある。特にバッチャーニ通りの方は、石造りの外観丸ごと可愛らしい。ティハニを訪れたら、ぜひチェックしてみて欲しい。
 

ラベンダーハウス LegendásHáz	http://levendulahaz.eu

次回は「バラトン湖で過ごすアクティブな休日」