16. ハンガリーで湯めぐり
世界有数の「温泉大国」ハンガリー 古代ローマから温泉文化が根づいているハンガリー。首都のブダペストをはじめ、国内最高峰の山々が連なる自然と文化の宝庫であるハンガリーの北東部を中心に〈お湯好き〉を満足させる温泉が多数点在し、温泉治療には年間一定額の保険適用が認められていることから、とりわけ療養温泉は運動機能障害に悩む人々で賑わっている。 入浴可能なヘーヴィーズの「天然温泉湖」 ヘーヴィーズ温泉湖 ミシュコルツ・タポルツァの「洞窟温泉」 ミシュコルツ・タポルツァ洞窟温泉 次回は「トカイワイン紀行(前編)」
1937年にブダペストで開かれた〈世界初の温泉学会〉に集まった温泉学者の合意を受け、「温泉都市」の称号を獲得したブダペストには、100以上の源泉と50近くの浴場がある。
16世紀のオスマン帝国支配下には、エキゾチックなトルコ式浴槽も造られた。ブダペストでは西洋風のものからトルコ風の浴槽まで、日本とは一味も二味も趣の異なる温泉の雰囲気や文化が手軽に楽しめる。その中で特に観光客がアクセスし易いのは、緑豊かな市民公園の中にある「セーチェニ温泉」であろう。
ここは1879年に源泉が発掘された、ヨーロッパ最大級の総合温泉施設。ネオバロック様式建物内に、3つの屋外温泉プールを含め15の浴槽がある。ここで湯につかりながら指す「風呂チェス」でも良く知られている。
日本人の感覚からするとお湯はかなり低めだが、源泉の温度はブダペストで最も熱い75℃。そのため中庭の温泉プールは有り難いことに冬でも営業している。しかも夜10時まで入浴できるので、町歩きを存分に楽しんだ後でもゆっくりと温泉に浸かり、疲れた体を癒すことができるのも、観光客にとって大きな魅力だ。
バラトン湖の北西に位置するヘーヴィズには、入浴が可能な天然温泉湖がある。大きさは「東京ドーム」とほぼ同じ。古代の噴火口の跡に形成された湖で、深さは36メートル程ある。
入浴可能な湖としても、世界最大規模を誇る。3日で湯がすべて入れ替わる、いわゆる〈かけ流し〉だが、リスクを伴う吹き出し箇所の清掃も、3名体制で定期的に行われている。
泉質は、炭化水素と硫黄を含むアルカリ温泉。湖底の泥には治療効果の高い成分が含まれており、わずかに放射性がある。リュウマチや関節疾患などはもちろん、美容にも高い効能があるのだという。施設内は〈完全バリアフリー〉。屋内での治療やリハビリを目的とする入浴では、入浴時間も含めスタッフが様々な介助にあたってくれるそうだ。
冬でもほのかに湯気が立ちあがる温泉湖では、冬でも蓮の花が咲く。そんなヘーヴィーズでは、ザッブ~ン!と湖に飛び込んで、浮輪などを使って湖面にぷかぷかと浮かび、非日常的なスタイルでの温泉浴を満喫してみてはいかがだろうか。
この温泉施設にもスパの設備が整っているが、温泉湖の周辺にはマッサージやトリートメントなどに対応したウェルネス施設を完備した4ッ星以上のホテルが多数あり、湖と同じ温泉を使った宿泊施設もある。また、温泉湖まで行かずとも、目抜き通りに面した一角(屋内)に無料の飲泉施設もある。
Hévízi Tófürdő
泉質はラドン泉。リュウマチをはじめ、心臓や循環器、呼吸器の疾患などへの効能が確認されている。全長約150メートルの洞窟に5つのプールがある。湯温は29~35℃とやや温めだが、外気はほとんど入ってこないため、冬でもかなり温かい。理学療法などにも対応した本格的な温泉施設ではあるが、ジャグジーや打たせ湯などもあり、レジャー感覚での温泉浴も楽しめる。
また、追加料金を支払えば岩塩浴(40分/HUF1,600)をはじめ、オイルを使ったボディマッサージ(20分/HUF2,200)、足裏マッサージ(20分/HUF2,200)などの各種トリートメントが用意されており、ビール風呂とビア・マッサージがセット(20分+40分/HUF6,000)になった男性向けメニューや、カップル向けの泥パック(30分+40分x2/HUF12,000/ボディマッサージ付)などもある。
このミシュコルツ・タポルツァの「洞窟温泉」は、ブダペストを起点とする日帰りでも十分楽しめるが、施設に隣接するホテルもあるのでミシュコルツ中心部の観光と組み合わせたり、エゲルやトカイを起点にして訪れることもできるので、次のハンガリー旅行の楽しみに1回でも「温泉」を加えてみてはいかがだろうか。その際には、水着やタオルと一緒に、ビーチサンダルも忘れずに用意しておくと便利である。
Miskolctapolcai Barlangfürdő
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