17. トカイワイン紀行 ≪前編≫
トカイの5ッ星ホテルでワイン&グルメ「アンドラーシ・レジデンツィア・ワイン&スパ」
ハンガリーは道路網が整っているため、トカイのワイナリーへはブダペストからの日帰りも十分可能だが、せっかくなら1泊してトカイワインを十二分に堪能したいところ。そんな時にお勧めしたいのが、トカイ村から車で10分ほどの場所にある5ッ星ホテル「アンドラーシ・レジデンツィア・ワイン&スパ」である。
タルツァル村にあるこのホテルは、かつてセラーとして使われていた15世紀建造の建物を改装した、全41室の趣あるバロックスタイルのラグジュアリーな宿で、ハイレベルなウェルネスやスパをはじめ、〈ユニークな食体験〉を手頃な価格で提供している。
ホテルの自慢は、タイプの異なる80ものトカイワインをラインナップしたワインリスト。ブダペストにある高級レストランでも、トカイワインばかりをこれほど常備するのは容易ではない数である。
もちろん、お腹の空き具合に応じて、好みのワインをアラカルト料理と合わせることもできる。
料理を選ばないトカイワイン
かつて500メートルの長いセラーの一部だった地下レストランで、鴨肉のパテと「ディスノークー」のサモロドニのドライ(Disznókő Tokaj Száraz Szamorodni 2006)を合わせてみたが、これが実に絶妙なマッチング。トカイにいると、白ワインの概念が大きく変わる!
メインのサーモン料理は、「ブライテンバッハ」の香り高いハンガリーの白ぶどう品種〈ハーシュレベリュー〉を使ったラピス(Breitenbach Lapis 2013)と合わせ頂き、その後はデザートをパスし、代わりに〈フルミント〉と〈ハーシュレベリュー〉をブレンドした、マード地区のデザートワイン(Demetervin Élvezet 2014)のみで閉めた。
意外に思われるかも知れないが、こうして味わっているとトカイのワインは〈料理を選ばないワイン〉であることに気づく。白でもさっぱりした料理から、塩気やこってりした味わいの料理、そしてチーズやデザートに至るまで何にでもOK! 貴腐ワインは人気の〈グヤーシュ〉や、あの〈フォアグラ〉との相性も抜群である。
個別にワイナリーを訪れた場合、複数のワイナリーのトカイワインを同時に飲み比べすることはできないが、この「アンドラーシ・レジデンツィア・ワイン&スパ」に宿泊すれば、豊富なセレクションの中から懐具合に応じ、様々な方法で一度にたくさんのトカイワインが味わえる。これは〈トカイに宿泊してこその愉しみ〉である。
アンドラーシ・レジデンツィア |
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【コラム】 美食の国では欠かせない〈食後酒〉の習慣
日本人にもだいぶ〈食前酒〉は定着したが、〈食後酒〉と言えば残念ながらほとんど浸透していないのが現状だろう。
その要因の一つとして、食後酒として飲まれる蒸留酒などの〈アルコール度数の高さ〉が考えられるが、食前酒に食欲を増進させるという役割があるように、食後酒にもきちんとした飲むべき理由がある。
実際、旅先で連日食べ過ぎて消化が追いつかず〈胃もたれや便秘で苦しい〉とよく口にする人がいるが、その様子を見たり聞いたりすると、食べる量の多さは別として、食後酒まできちんと飲んでいないケースが非常に多い。
だが、強いお酒が苦手という方に朗報。トカイの名産でもある貴腐ワイン(アスー)やデザートワインは、消化を促す作用のある甘口ワインで、食後の余韻を楽しむにも、食べ過ぎたお腹をゆっくり休めたい時にも、大切な役割を果たす絶好の食後酒となる。古くから消化器系の特攻薬として知られ、あの女帝マリア・テレジアも医者に処方され、飲んでいたと言われている。
ハンガリーを代表するお酒に、主に食前酒としてふるまわれる〈パーリンカ〉と呼ばれるフルーツブランデーや、主に食後酒として出されるハーブ酒〈ウニクム〉などがあるが、これらのアルコール度数は40~50パーセントであるのに対し、貴腐ワインのアルコール度数は10~15%程度。程よい甘さも手伝って、口にし易いも特徴の一つである。
ついつい美食の国では食べ過ぎてしまいがちだが、食事の際には食後酒までしっかり飲んで、ハンガリーの味覚を心ゆくまで愉しんでみよう。便秘がひどい時は、パーリンカなどのアルコール度数が高い蒸留酒の方がより効果的であるが、お酒に弱い方はまずは食べ過ぎにご注意を!
次回は「トカイワイン紀行・後編」
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