美食の王国、スロヴェニア

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長年に渡りテランを生産しているヴィナクラス・セジャーナ社のカルストワイン (C) Vinakras Sežana



「酒を知らずして、その国の美食を語るべからず」

豊かな食文化が育まれた国には、必ずといっていいほどその影に美酒が存在する。もちろん、スロヴェニアも例外ではない。ということで、ここではスロヴェニアの代表的なお酒、ワインについて少しお話しよう。

 小さなワイン大国、スロヴェニア


フランスのブルゴーニュやボルドーと同緯度にあり、日照時間も長く、雨量などもブドウの栽培に適しているるスロヴェニアは、知る人ぞ知る高品質なワインの産地として知られている。
スロヴェニアにあるワイン産地は3つ。これらの地域はさらに14の地域に区分され、それらを結ぶワイン街道が20もある。

マリボルにある世界一古いワインの木
(C)スロヴェニア政府観光局

スロヴェニアのワインの歴史は紀元前6世紀にまで遡り、ローマ帝国時代に花開いたワイン文化は、約600年続いたハプスブルク統治時代に発展を遂げた。マリボルにはヨーロッパで一番古い樹齢400年以上のブドウの木「モドラ・カウチナ」がある。

国民一人あたりのワイン消費量は、人口200万人の小国にしてなんと世界第7位。生産されたワインのほとんどは国内で消費される。
「良質なワインを作りたい」という強いこだわりから、生産量そのものを抑えるワイナリーも多くいため、海外でほとんど目にすることはない。

ワインの名産地を数多く有するイタリアと国境を接していることから、「スロヴェニア人もイタリアのワインをよく飲むのか」とよく尋ねられるらしいが、そんな時彼らは「(この国には)美味しいワインがたくさんあるから飲まない」ときっぱり言い放つ。その言葉には、彼らの強い自信と誇りが漲っている。このワインもまた彼らのアイデンティティの一つのようだ。

中でも彼らの自慢は、ルビー色をしたカルスト産の「テラン」という品種のワイン。乳酸菌や鉄分が豊富に含まれていることから、古代ギリシャやローマは回復薬としても飲まれていたというワインで、あの探険家マルコ・ポーロの著書にも登場している。


    

美しく色づいた秋のブドウ畑 / 地下にあるワインセラー / ワイナリーの一番古い部分はレストランになっている (C) Vinakras Sežana



テランはスロヴェニアのトスカーナと謳われる、イタリア国境とアドリア海に接するプリモリエ地域・クラ地区のテラ・ロッサの土壌でのみ産出されるミディアムボディのワインで、力強い味わいの中にもフルーティさが感じられる。カルストの生ハムとの相性が抜群に良く、比較的カベルネ種を好む人の口に合う。

もし、このテランで物足りなさを感じるという場合は、お薦めしたいのが「テラントン」。別名「クラシュキ テラン」と呼ばれるこの品種は、クラス地区の特殊な赤土から作られるワインで、味は骨格がしっかりしたパンチの効いたフルボディ。「テラン」よりも2℃高めの16~18℃で飲むのがベストとされ、スパイシーな肉料理やチーズとよく合う。主にヨーロピアンが好む味わいだ。

ヴィナクラス・セジャーナ社の
ペテル・ボルシチュ氏

この他にもミネラル感のある白や、飲み口の良いロゼなどもたくさんあるので、食事の内容に合わせて色々と試してみると良いだろう。

もちろん、コストパフォーマンスも文句なしだ。今回、ワインをテイスティングをさせてもらったヴィナクラス・セジャーナ社では、来訪者に対しテランは10ユーロ、テラントンは12ユーロで販売している。

「ワインの品質は、苗木を育てる人の腕に委ねられる。」

と語るヴィナクラス・セジャーナ社のペテル・ボルシチュ氏。
決して土壌や気象条件だけで全てが決まるわけではない、というこの言葉から、同氏のワイン造りに対するひたむきな情熱と、品質に対する自信が静かに伝わってきた。

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