ラドウリツァでスロヴェニアの“あまい”伝統にふれる

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“スロヴェニアのモーツァルト”と呼ばれるアントン・トマージュ・リンハルトが生まれたラドウリツァ
旧市街の広場にはリンハルトの像がある


 養蜂大国スロヴェニア


国土の60パーセントが森に覆われているスロヴェニアは、蜂蜜天国と呼ばれている。養蜂家の数は8,000人。つまり、この国では国民の250人に1人が養蜂家ということになる。

養蜂博物館入口

スロヴェニア養蜂の歴史は600年前にまで遡る。世界最初の養蜂研究家といえばアントン・ヤンシャ(1734-1773)。ブレズニカ村生まれのスロヴェニア人だ。
ヤンシャはウイーンの美術学校で学んだが、ハプスブルク帝国の女帝マリア・テレジアがウイーンに養蜂学校を設立した際、蜂に対する深い知識を持っていたこのヤンシャを初代養蜂指導者として任命した。

ヤンシャはここで人と蜂が共生する近代養蜂を確立。そして、ヤンシャが綴った2冊の著書はヨーロッパの養蜂に多大な影響を与え、いつしか「養蜂の父」と呼ばれるようになった。

その昔、養蜂用の巣箱には木のウロや藁で編んだ籠が使用されていたが、その頃は巣に蜜が溜まったら硫黄を使って蜂を殺し、巣を壊してから蜜と蝋を取り出す使い捨ての手法だった。その後、「カーニオラン」と呼ばれる再利用が可能な木造の蜂小屋が作られるようになった。

蜂は自分の巣箱を色で覚える習性があることから、巣箱には蜂が迷わないように表面をカラフルに色づけしたが、やがて聖人の肖像や聖書の中の物語などが描かれた「巣門飾り絵画」で飾られるようになった。養蜂家のちょっとした遊び心が垣間見られる。

スロヴェニア人は蜂に対して並々ならぬ愛情を抱いている。スロヴェニア語では、蜂が死ぬと人間の死と同じ「逝く」という言葉で表現することからも伺い知れる。つまり、彼らにとって蜂は単なる生活の糧ではなく大切なパートナー。だからこそ、守ってあげなければ・・・という気持ちが強い。

  

養蜂博物館の展示室 / 養蜂の父と呼ばれるアントン・ヤンシャの像 / キリストをモチーフにした巣門飾り絵画



頑丈で、蜂を冬の寒さや夏の暑さから守ってくれるこうした蜂小屋は、現在もスロヴェニアで広く使用されている。また、定置養蜂と呼ばれる蜂の巣をたくさん収めた小屋を建て、住居に直接巣箱を付けて蜂と生活を共にする養蜂家も少なくない。

ブレッド湖から6キロの場所にあるラドウリツァには、そうしたスロヴェニアの養蜂の歴史を紹介する世界唯一の「養蜂博物館」がある。この博物館では、スロヴェニアの養蜂の歴史と技術が紹介されている他、18世紀頃に流行した養蜂箱アートなどのコレクションも展示されている。


 私の愛を召し上がれ♪ ~ レツッターハート


レツッターハート

スロヴェニアに伝わる「レツッターハート」というものをご存じだろうか。
レツッターハートとは、蜂蜜、シナモン、小麦粉などからできたスロヴェニアに伝わるハート型の食べられるオーナメント。1週間ほど寝かせた生地を伸ばし、型に入れて焼き、それを赤色の色素でコーティングして、砂糖でデコレーションしたもので、ほんのりシナモンの香りがする。北欧のジンジャーブレッドや、ドイツやチェコなどにも似たようなものがあるが、作り方は微妙に異なるそうだ。

このレツッターハートは、100年は変形しないと言われていることから「その愛も永遠に変わることはない」という意味で、その昔スロヴェニアで愛の告白に使われ、これを受け取った人はかじらなければならなかったそうだ。今は結婚式のボンボン(砂糖菓子)の代わりや、ちょっとしたお祝いで配ったりされるという。

ラドウリツァの養蜂博物館のすぐ近くに、このレツッターハート作りが見学できる工房(博物館)がある。工房の見学は無料で、希望者はワークショップにも参加が可能。レツッターハートはスロヴェニア土産としても人気で、小さなものであれば4ユーロ程度から購入できる。

また、建物の上階は宿泊施設、1階部分は木のぬくもりが優しいレストランになっていて、スロヴェニアの伝統料理が堪能できる。中でもリスィチケ(きのこ)がたっぷり入ったこの店のクリームスープは絶品なのだとか。
ラドウリツァへ行ったらぜひご賞味あれ!

    

レツッターハート博物館 / すべて手作りで丁寧に作られている / 甘いシナモンが香るかわいらしい工房内 


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