歴史ある文化都市、リュブリャナ

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公邸として使用されていた建物。現在はリュブリャナ大学本部になっている。


 小さな芸術と学問の都、リュブリャナ


ハプスブルク家によって1701年に創設された
フィルハーモニー管弦楽団

リュブリャナの歴史は「エモナ」という街が築かれた遙かローマ帝国時代にまで遡るが、最初に歴史の舞台に登場したのは1144年のことだ。当時はまだドイツ語でライバッハと呼ばれていた。

リュブリャナが最初の黄金期を迎えたのは、州都となった13世紀のこと。 1335年にリュブリャナはハプスブルク家の支配下となったが、その勢いは止まることなく人口も増加。主に商業を中心に栄え、1461年には司教座が置かれるまでになった。
ちょうどその頃、スロヴェニアにも宗教改革の嵐が巻き起こっていたが、ハプスブルク家による強制的な再カトリック化が行われ司教座は守られた。

ハプスブルク統治時代には特に文化が推進され、1701年には世界最古となるスロヴェニア・フィルハーモニー管弦楽団(前身はアカデミア・フィルハルモニコルム)が創設された。これを機に、多くの芸術家がライバッハに移り住むようになり、リュブリャナは芸術の街としても花開いた。
このスロヴェニア・フィルハーモニー管弦楽団は、あのマーラーが指揮をしたこともある由緒あるオーケストラで、ソサエティーの会員にはハイドン、ベートーヴェン、ブラームスなど錚々たる作曲家が名を連ねていた。


こんな小さな街なのに、リュブリャナには国立オペラバレエ劇場(オペラ座)もある。
1892年にチェコ出身の2人の建築家、ヤン・ヴラディミール・フラスキーとアントン・フルービーによって設計された、華やかなファサードを持つネオ・ルネッサンス様式の建物だ。
この程、6年かけて行われていたオペラ座の改築工事が終了し、リニューアルオープン。こけら落としには、ダニーロ・トゥルク大統領も出席し、著名オペラソリスト、エトワールダンサーを招いて盛大に行われた。

プレチェニク作 リュブリャナ大学図書館

また、リュブリャナは芸術だけでなく学問の街としても知られている。
フィルハーモニー管弦楽団近くにあるリュブリャナ大学は、スロヴェニアで最初に設立された国内最大の大学で、その歴史はナポレオン統治時代の1810年にまで遡る。

大学の本部となっている優美な建物は、1902年にヤン・ヴラディミール・フラスキーによって設計され、かつて公邸として使用されていた。リュブリャナ大学の図書館はプレチェニクが設計したもので、プレチェニクが手がけた建造物の中でもスケールの大きな作品の一つに数えられている。

宗教曲で有名な後期ルネサンス音楽の作曲家、ヤコブス・ガルス(またはヤーコプ・ハンドル)など、数多くの偉大な音楽家を輩出しているスロヴェニア。リュブリャナ大学は、23の学部と3つの専門学校を擁しているが、その中に音楽院もある。
ここの卒業生には、ドブロブニク・オーケストラの主任指揮者に就任したスロヴェニア生まれの指揮者、アントン・ナヌートや、リュブリャナ歌劇場の音楽監督を務めた指揮者兼作曲家、ボーゴ・レスコヴィチなどがいる。

ミュージック・ソサエティーの建物と
作曲家、ヤコブス・ガルスの胸像

また、ヤナーチェクの弟子であるのエメリク・ベランに学んだ後、プラハ音楽院に留学したスロヴェニア人作曲家スラヴコ・オステルツは、帰国後この音楽院の教授を務めている。リュブリャナ大学本部の裏手には、ミュージック・ソサエティーの建物がある。


■ スロヴェニア文学

プレシェーレンやツァンカルなど、スロヴェニアは文学の分野においても興味深い人材を輩出してきた。19世紀後半のスロヴェニア文学の近代化運動も、このリュブリァナを中心に展開された。

文学におけるスロヴェニアの地位は、ドイツなどと比較するそれほど高いとは言えないが、長らく自分たちの国家を持つことがなかったスロヴェニア人にとって、スロヴェニア語と文学は彼らのアイデンティティの象徴となっている。そうした背景もあってか、スロヴェニア人は自国の文学をこよなく愛する人が多く、また理解も深い。なるほど、実際に街中を歩いてみると、街の大きさのわりに書店が多い。

昨年、東京で行われた「スロヴェニア文化の日」の集いで、ほんの少しだけスロヴェニア文学にふれることができたのだが、他とは異なる独特の言語を持つスロヴェニア語の、その洗練された表現が何とも新鮮で驚かされた。
言葉の使い方も実に巧みだ。例えば恋愛をテーマにした詩の朗読に耳を傾けていると、その少し皮肉った一節に思わず顔をしかめたり、かと思ったら別の一節でその柔らかな表現に思わず笑みがこぼれたり・・・。なんとなく心がくすぐられる感じがする。

スロヴェニアでの取材中にお世話になったガイドさんの話によると、スロヴェニア語は世界の難しい言語ベスト10に数えられているという。また、翻訳にもいくつか決まり事があり、微妙なニュアンスの使い分けには熟練された技術が必要なのだそうだ。
そうしたこともあってか、日本にはご紹介できるスロヴェニア文学の翻訳本が少なくて残念だが、スロヴェニア文学の巨匠であるイヴァン・ツァンカルの作品は日本語にも翻訳されている。この本はネットや大型書店などで入手できるので、興味のある方はスロヴェニア旅行の前にでも一読しておけば、より深くスロヴェニアという国やこの国の文化を感じることができることだろう。



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