地底に広がる神秘の世界、ポストイナ鍾乳洞

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無数の極細鍾乳石が垂れ下がる「スパゲッティ・ホール」の天井部分 (ポストイナ鍾乳洞)



このポストイナ鍾乳洞には「ピサの斜塔」やら「美しい洞窟」など、各所におもしろいネーミングがされている。そんな中で思わず“ぷぷっ”と噴いてしまったのが、「スパゲッティ・ホール」と呼ばれる場所。ちょうど見学コースのメインスポットにあたる。
このスパゲッティホールには、天井から無数の極細鍾乳石が垂れ下がっている。一見白っぽく見えるが、よく見ると透明。太さはわずか5ミリで、中はストロー状(空洞)になっている。この場所は無風であることから、こうした鍾乳石ができたのだという。もちろん、今も成長を続けている。

中が空洞になった極細の鍾乳石と聞き「私ならブカティーニかカッペリーニとネーミングするんだけどな~」、などとくだらないことを考えながら歩いていたら、突然照明が消えて真っ暗に。ガイドさんから「遅い!」とイエローカードでも出たのかと一瞬焦ったが、あとで演出だったと知って一安心した。だが、単に観光客を楽しめるだけでなく、鍾乳石の保全する上でも小まめに消灯しているのだそうだ。もちろん洞内では、喫煙や鍾乳石に触れたりするのもNGだ。

  

シャンパンタワーのような艶やかな鍾乳石 / 下から成長する石筍 / 鉄分を含んだ赤い鍾乳石



洞内は鍾乳石の保存のため最低限の照明が使用されているが、実はその照明が原因で近年は観光による問題もでているのだそうだ。それはなんと「苔」。照明があたることで微生物が光合成が始め、鍾乳石に苔が付着してしまうのだという。
それを聞いて、原始的な生物の計り知れない強さを再認識した。

プロテウス

見学コースを進んで行くと、「ロシア回廊」と呼ばれる場所にでる。ここは別の2つの鍾乳洞への分岐点にあたる。また、この場所には戦時中にドイツ軍の武器庫があり、そのにパルチザン軍が火を放ったことから天井や壁が黒く焦げたようになっている。

このポストイナ鍾乳洞には、洞内での生息に巧みに適応した生物もいる。ここで初めて発見されたのは、ティタネテス・アルボスというワラジムシの仲間だが、キャラクターグッズにもなっているのがドラゴンの子供ともいわれる「プロテウス」だ。プロテウスはイモリの仲間で、体長は20センチ。洞窟生物の中で最も大きい生物と言われている。寿命は100年を超え、6年間餌を食べずに生きたという例もあるという。まさに時代の最先端を行く(?)“超エコ”な生物だ。

プロテウスは十数年に一度50個ほどの卵を産卵するが、そのうち孵化できるのはわずかに数個だけだという。また、生まれた時には目があるが、洞窟内での過酷な環境で生き抜くために、成長すると目は完全に退化する。エネルギーの消費を最小限に抑えるため、足も身体も水の抵抗を抑えるように細く進化した。肌を守る色素がないのも、洞窟生物の大きな特徴の一つだそうだ。

1万人が収容できる「コンサートホール」

見学コースの最後の方に、このプロテウスのいる水槽がある。ガイドさんの話によると、目は見えなくても微妙な温度の変化などから、近くに人(別の生物)がいることを感じているのだという。
そんな話を聞いていたら、ちょっと気味悪く見えなくもないプロテウスが、妙に愛おしく感じられてきた。

ガイドツアーは、その先のコンサート・ホールで終了する。1万人を収容できるこの巨大な空間では、実際にクラッシックのコンサートが開かれている。
それも18世紀から続く伝統というのだから、スロヴェニアには驚かされてばかりだ。
  
  

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