08. シシィが愛したグドゥルー

掲載日 : 2016年06月15日

写真 : 筆者撮影

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グドゥルー宮殿

ハンガリーのベルサイユと謳われる「グドゥルー宮殿」



1837年12月24日、バイエルン王家のヴィッテルスバッハ家傍系バイエルン公マクシミリアンと、バイエルン王女ルドヴィカの次女として、ミュンヘンで生を受けた皇妃エリザベート(以下、シシィ)。とりわけ大公に可愛がられ、無邪気で快活に育った彼女の眼差しは常に世界へと向けられ、その生涯においてヨーロッパ各地を旅したことでも知られている。

そうしたシシィの生まれ故郷であるドイツ南部のバイエルン州を起点にオーストリアやイタリア、スイス、そしてハンガリーに点在するシシィゆかりの地を結ぶ、全長2,000キロにおよぶ文化街道「シシィ街道」がある。
この街道沿いには、まるでおとぎ話に出てきそうな宮殿や庭園、ミュージアムや記念碑の他にも〈美貌の皇妃〉と謳われたシシィにあやかって、ビューティ&ウェルネスの提供に力を入れている場所もある。

そんな「シシィ街道」のドイツからハンガリーへと伸びる東ルートの終点が、ブダペストの北東およそ30キロにある小さな町グドゥルーである。


ハンガリーのベルサイユと謳われる「グドゥルー宮殿」

ハンガリーをこよなく愛したシシィ。滅多にハンガリーへと足を運ばなかった皇帝であり夫のフランツ・ヨーゼフとは対照的に、シシィはウィーンよりも好んでブダペストに滞在したという。だが、居城としたのはブダペストの王宮ではなく、郊外にある「グドゥルー宮殿」であった。

ハンガリーの〈ベルサイユ〉とも謳われる「グドゥルー宮殿」は、女帝マリア・テレジアとも交流のあった由緒あるハンガリー貴族グラシャルコヴィッチ・アンタル1世が、1735年に建てたバロック様式の美しい宮殿。1841年にグラッシャルコヴィッチ家の男系統が絶えたため女系の子孫に譲渡されたが、その後も持ち主が次々と変わり、オースリア=ハンガリー二重帝国の発足を受け、ハンガリー政府がこの宮殿を買い取り皇帝夫妻に寄贈していた。

グドゥルー宮殿

バロック様式の優美な装飾

その後、第1次世界大戦での敗戦と二重帝国の解体により、第2次世界大戦までは時のハンガリー摂政ホルティ・ミクローシュの夏の離宮として維持されたものの、第2次世界大戦の後でソ連軍に奪われ長らく放置。ソ連軍のバラックとして使われていた時代もあった。

この略奪により宮殿はすっかり荒廃してしまったが、民主化後に記録を基に本格的な修復工事が進められ、1996年に最初の常設展示部分が公開された。修復はその後も進められ、徐々にかつての華やぎを取り戻しつつある。宮殿の裏手奥には、シシィを偲んで造られたエリザベート・パークも広がっている。

宮殿の前で静かに目を閉じて立ち、頬をなでる爽やかな風や鳥のさえずりを感じてみる。そして、パッと目を開けた時に視界に入った枝っぷりが見事な木々や、その隙間からこぼれ落ちるような太陽の煌めきが、シシィの生まれ育ったバイエルンの生命感あふれる豊かな自然を思い起こさせる。その瞬間、シシィが何故ウィーンではなくこのグドゥルーを好んだのか、手に取るように分かったような気がした。

宮殿の内部には、外から建物に向かって右側にフランツ・ヨーゼフの執務室やサロンが、左側にシシィの続き間がある。また、日曜礼拝に使われている「グラシャルコヴィッチ伯爵の礼拝堂」は、建物の右手奥にある。
スミレの花が大好きだったというシシィ。彼女の好みに合わせ、部屋にある壁紙やカーテンなどはバイオレットで統一され、壁にはウィーンでは見られないシシィの肖像画がたくさん飾られている。

そうした肖像画の中に、横並びに配置された若かりし日のフランツ・ヨーゼフとシシィが描かれた2枚の肖像画がある。この2枚を見比べるとフランツ・ヨーゼフとシシィが良く似ていて、2人が従兄妹同士であったことを思い起こさせてくれる。

話が逸れるが、フランツ・ヨーゼフの縁談相手は当初、シシィの姉であるヘレーネだったというのはご存じの方も多いはず。その見合いに同行したシシィが、フランツ・ヨーゼフに見初められハプスブルク家へ嫁ぐこととなり、まさかの展開で破談となったヘレーネが嫁いだのは、同じドナウ川の西にある世界遺産の町レーゲンスブルクに城を構えるトゥルン・ウント・タクシス家のマクシミリアン・アントン侯爵であった。筆者はドナウを見るとよく、川の西と東に嫁いだこの2人の姉妹の不思議な運命の物語を思い出す。



グドゥルー宮殿  エリザベート

左:宮殿の裏手には広大な庭園が広がっている
右:バイエルンで伸び伸びと育ったシシィは乗馬を得意としていた (馬術ショーでの一場面)


グドゥルー宮殿のクリスマス

1870年代に「グドゥルー宮殿」でクリスマスを過ごしていたという皇帝一家。クリスマスが近づくアドヴェントの季節になると、この宮殿にもクリスマスデコレーションが施され「アドヴェント・パレスデーズ」(Adventi Kastélynapok/2016年は12月17・18日に開催予定)と題して、音楽や踊りなどのパフォーマンス、クリスマスコンサートやオペラなどが上演される他、手作り民芸品が並ぶクリスマスマーケットなどが催される。

また、12月28日にはファミリーで楽しめるイベント「エリザベート皇妃のクリスマス」(Erzsébet királyné karácsonyai)も予定されているので、この時期ブダペストに滞在予定のシシィファンは要チェックだ。これらの開催日には、宮殿博物館は毎日10時から18時までオープンし、コンサートのチケットは宮殿の窓口で17時まで販売されている。

2016年12月3日に予定されている「アドヴェント・コンサート」には、ハンガリーを代表するピアニストのゲルゲイ・ボガーニが登場。その翌日(12月4日)には、今年35周年を迎えるグドゥルー交響楽団の記念コンサートも行われる予定だ。

その他にも宮殿では、年間を通じ特定日にコンサートや文化イベントがたくさん行われているので、クリスマスのシーズンに限らずこちらもチェックしておきたいところ。但し、開催日やプログラムの内容は、予告なく変更される場合もあるため要注意。出かける前には、宮殿のウェブサイトで再確認をしておこう!



グドゥルー宮殿
Gödöllői Királyi Kastély

http://www.kiralyikastely.hu




ラーザール馬術公園

馬術ショーではハンガリー版「流鏑馬」も披露

ハンガリー伝統の馬術ショーを楽しむ

せっかくグドゥルーにまで行ったら、シシィゆかりの宮殿の他にもう一つ足を伸ばしてみたい場所がある。それが11回もワールドチャンピオンに輝いたプロ競争馬車選手のラーザール兄弟が所有する「ラーザール馬術公園」。バイエルンで生まれ育った快活なシシィは馬や森が大好きで、グドゥルー滞在時にはこの周辺の森まで馬を走らせていたという話も残されている。

この馬術公園で、ハンガリーの伝統的な馬術ショーが楽しめる。ショーには、世界遺産のホルトバージ国立公園で放牧されているハンガリー古来の牛〈マジャール・スルケ〉も登場。巧みな鞭捌きで馬をまるで犬のようにお座りさせてしまう曲馬や、ハンガリー版の〈流鏑馬〉など見どころが盛りだくさん。さらにシシィに見立てた赤いロングスカート姿の女性も登場し、横座りした状態での華麗な馬術を披露し、観客を沸かせる場面もある。

この他にも「ラーザール馬術公園」の敷地内には、ミニ動物園や厩舎、ラーザール兄弟が獲得したトロフィーなどを保管した「ワールドチャンピオン・ホール」、さらにウェディングやグループに対応したイベントスペースや、フォークロアミュージックを聴きながら伝統料理が味わえるレストランも併設されている。

但し、いずれもグループ向けで、利用の際には事前予約が必要となる。馬術ショーは、事前に予約すれば個人でも見物できるが、個人での訪問時に見学できる範囲は制限されることもあるので、その点については申込み時の確認が望ましい。



ラーザール馬術公園  ラーザール兄弟のトロフィーの数々

左:犬のようにお座りをする馬 (馬術ショー)
右:ラーザール兄弟が獲得したトロフィーの数々



ラーザール馬術公園
Lázár Lovaspark

http://www.lazarlovaspark.hu

次回は「ハンガリー王国の原点、エステルゴム



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